(※画像はイメージです/PIXTA)

高齢夫婦にとって、子や孫の帰省は何よりの楽しみです。しかし、その微笑ましい一家団欒の裏で、「相続税対策」を口実にした実家の名義変更(生前贈与)を迫られるトラブルが、弁護士や司法書士の相談現場で目立っています。今回紹介する70代夫婦は、夏休みに帰省したきた長男の「良かれと思って提案した節税対策」に違和感を抱きました。そして、専門家に相談したことで発覚した、“優しすぎる提案”の正体とは? 現代における実家依存の実態と、親世代が資産を守るための現実的な防衛策について解説します。*本記事は、弁護士・司法書士の相談で見られる事例を基に、個人が特定できないよう再構成しています。

【真相】節税ではなく「不動産担保ローン」のための名義変更

そこで判明したのは、息子の語っていた「親思いの節税」とは真逆の恐ろしい現実でした。

 

そもそも、Aさん夫婦の資産(貯蓄1,000万円と郊外の実家)では、Bさんがネットで調べたとおり、相続税の基礎控除(配偶者と子ども1人の場合4,200万円)の枠内に収まる可能性が高く、最初から高額な相続税など発生しない状況でした。

 

「お宅の資産規模で、今わざわざ費用をかけて生前贈与をする合理的理由はないように思います。名義を変えると、ご長男がその実家を売却したり、担保に入れたりすることが法的に可能になりますが、本当にご納得されていますか?」

 

Cさんに対し、Aさん夫婦は司法書士から聞いた言葉をそのまま突きつけました。

 

「我が家には相続税なんてかからない。お前、本当はこの家を担保にして、金を借りるつもりなんじゃないだろうな?」

 

Cさんは、これ以上親を騙すことはできないと観念したのか、良心の呵責にもかられたのか、真実を話し出しました。

 

実はCさんは、本業の傍らで行なっていた高リスクな投資で多額の借金を抱えており、返済に行き詰まっていました。自身の信用力ではこれ以上の借入れができないCさんは、「実家の名義を自分に変え、その実家を担保にしてノンバンクから高額な不動産担保ローンを引き出し、借金を一本化して穴埋めする」という計画を立てていたのです。

 

「もし、あのまま実印を押して、権利証や印鑑証明書を渡して所有権移転登記が完了していたら、息子がローンの返済に行き詰まった瞬間、この家は競売にかけられ、私たちは70代にして追い出されているところでした」(Aさん)

 

孫のDくんを連れた微笑ましい帰省も、両親への親切な態度も、すべては「親を安心させ、実印と権利証を出させるため」だったのです。

次ページ【解説】知っておくべき「生前贈与」と「老後資金」の注意点

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