(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後も働き続ける高齢者は珍しくありません。生活費を補うため、社会とのつながりを保つためなど、その理由はさまざまです。特に一人暮らしでは、毎月数万円の収入でも家計に与える影響は小さくありません。「働けるうちは働きたい」という言葉の背景に、老後資金への不安が隠れていることもあります。

「年金だけでは厳しい」週3日で得る5万円

午前6時半。明美さん(仮名・68歳)は、自宅を出て電車に乗ります。

 

向かうのは、オフィスや店舗が入る建物。週3日、午前中を中心に清掃員として働いています。

 

仕事内容は、共用廊下や階段、トイレなどの清掃です。勤務時間は1日4時間ほど。月によって多少前後しますが、給与は5万円程度になります。

 

「たった5万円と思う人もいるでしょうけど、私には大きいんです」

 

明美さんは数年前に夫を亡くし、現在は一人暮らし。年金収入は月約12万円で、金融資産は約600万円です。

 

住んでいるのは住宅ローンを完済したマンションですが、住居費がゼロになるわけではありません。管理費と修繕積立金に加え、固定資産税もかかります。

 

食費や光熱費、スマートフォン代、医療費などを合わせると、年金だけで余裕を持って暮らせるわけではないといいます。

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月の可処分所得が11万8,465円に対し、消費支出は14万8,445円。平均では約3万円、消費支出が可処分所得を上回っています。

 

明美さんも、清掃の仕事を始める前に家計を計算したことがあります。

 

「年金だけでも、節約すれば暮らせないわけじゃないんです。でも家電が壊れたり、固定資産税を払ったりすると、その月は赤字になる。貯金があるから大丈夫と思って使っていたら、いつの間にか減ってしまいそうで」

 

もともとは60代半ばまで事務のパートをしていましたが、勤務先の都合で退職。その後、求人で見つけたのが現在の清掃の仕事でした。

 

最初は「週3日なら」と軽い気持ちで応募したといいます。実際に始めると、楽な仕事ではありませんでした。

 

夏のゴミ置き場は暑く、トイレ清掃の日は何度も腰を曲げます。帰宅すると、昼食後に少し横になりたくなる日もあります。それでも、辞めようとは考えていませんでした。

 

「5万円あれば、美容院にも行けるし、友達に誘われたときに『今月はお金を使いたくないから』って断らなくてもいい。それが全然違います」

 

総務省『労働力調査』によると、2025年度平均の65歳以上の女性の就業率は19.5%。高齢期にも働く女性は一定数おり、65歳以上の女性では非正規の職員・従業員が229万人となっています。

 

そんな明美さんが自分の家計を改めて考えたのは、今年、体調を崩して仕事を休んだときでした。

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