「ローンさえ終われば安心だと…」築30年、届いた見積書
「この家で老後を過ごすんだと思っていました。ローンも終わったし、わざわざ引っ越す理由なんてないと思っていたんです」
そう振り返るのは、郊外の一戸建てで暮らしていた洋子さん(仮名・67歳)です。同い年の夫・隆さんと2人暮らしで、子どもたちはすでに独立しています。
夫婦の年金収入は月約22万円。住宅ローンは隆さんが64歳のときに完済しました。
4LDKの自宅を購入したのは30代半ば。子どもたちが小さかったころは、それぞれに部屋を用意でき、庭では夏にビニールプールを出したこともあります。
定年が近づくにつれ、夫婦が楽しみにしていたのが住宅ローンの完済でした。
「これで毎月のローンがなくなるね。年金になっても、家さえあれば何とかなるよ」
洋子さんは、隆さんとそんな話をしていました。ところが、ローンを払い終えて間もなく、別の出費が目立つようになります。
最初は給湯器でした。以前から調子が悪く、ついに交換することに。その後、雨どいの傷みを指摘され、さらに外壁にも劣化が見つかりました。
決定的だったのは、築30年を超えた自宅について、屋根や外壁など今後必要になる修繕をまとめて検討したときでした。業者から説明を受けた帰り道、隆さんが言いました。
「ローンは終わったのに、今度は家にいくらかかるんだろうな」
一度直せばすべて終わるわけではありません。キッチンや浴室、トイレも古くなっています。エアコンなどの家電も含めれば、この先どこが故障するかは分かりません。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上で現在の住宅に感じる問題として最も多かったのは「住まいが古くなり、いたんでいる」の29.5%でした。また「家賃、税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」と答えた人も15.5%います。
夫婦にも多少の貯蓄はありました。しかし、年金月22万円の生活に入り、これから大きく増える見込みはありません。
「100万円、200万円というお金を家に使って、それであと何年住むんだろうって考えるようになったんです」
さらに気になり始めたのが、家の広さでした。
2階にある子ども部屋はほとんど使っていません。庭の手入れや落ち葉の掃除も必要です。今は階段を問題なく上れますが、10年後も同じとは限りません。
ローンを完済したことで安心するはずが、夫婦は初めて「この家を維持し続ける費用」を考えるようになったのです。
