2029年導入へ動き出す「給付付き税額控除」――制度設計で残された5つの課題

2029年導入へ動き出す「給付付き税額控除」――制度設計で残された5つの課題
(※写真はイメージです/PIXTA)

社会保障国民会議の実務者会議では、2029年に「給付付き税額控除」を導入する方向で大筋合意されました。ただし、今回決まったのは導入時期であり、対象者の範囲や所得判定の方法、財源の確保など、具体的な制度設計については今後の議論に委ねられています。海外では低所得者支援策として活用されている給付付き税額控除ですが、日本で導入する場合には、行政手続きや所得情報の把握、制度の公平性など、解決すべき課題も少なくありません。今後の制度設計で焦点となる5つの論点を整理します。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
小林篤典(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

2029年導入が決まった「給付付き税額控除」

2026年7月、社会保障国民会議の実務者会議では、2029年に「給付付き税額控除」を導入する方向で大筋合意されました。

 

給付付き税額控除とは、所得税などの税額から一定額を差し引き、控除しきれない場合には、その差額を給付する制度です。所得が低く、そもそも納める税額が少ない人にも支援が届く仕組みとして、海外では低所得者対策や子育て支援策などで活用されています。

 

一方で、日本で制度化する場合には、単に導入時期を決めるだけでは十分ではありません。誰を対象にするのか、所得をどのように把握するのか、財源をどう確保するのかなど、具体的な制度設計が重要になります。

 

今後、議論が必要となる主な論点は大きく5つあります。

論点① 給付を先行するのか、税額控除と組み合わせるのか

1つ目の論点は、制度導入時から本来の「給付付き税額控除」として実施するのか、それともまずは給付制度としてスタートするのかという点です。

 

社会保障国民会議の有識者会議や実務者会議では、税額控除の仕組みは複雑であり、対象者の判定や行政手続きに時間がかかることから、まず給付を先行させるべきだという意見も出ています。

 

一方で、給付だけを先行させた場合、その後どのような段階を経て税額控除と組み合わせた制度に移行するのかという課題が残ります。

 

制度開始時点から本則通りの給付付き税額控除とする場合には、事前に所得情報の連携や申請手続きなどの仕組みを整備しておく必要があります。

 

論点② 恒久制度とする場合、財源をどう確保するのか

2つ目は、財源の問題です。

 

海外で導入されている給付付き税額控除の多くは、一時的な政策ではなく恒久的な制度として運用されています。

 

日本でも恒久的な制度として位置付けるのであれば、毎年必要となる財源をどのように確保するのかが大きな課題になります。

 

対象者の範囲を広げれば、その分だけ必要となる財政規模は大きくなります。社会保障制度全体とのバランスを踏まえながら、安定した財源を確保できる仕組みを検討する必要があります。

論点③ 対象となる所得層をどこまで広げるのか

3つ目は、給付対象となる所得水準をどこに設定するかという問題です。

 

給付付き税額控除は、一般的には中低所得者への支援策として位置付けられています。しかし、対象となる所得の範囲をどこまでとするのかによって、制度の目的や財政規模は大きく変わります。

 

例えば、一定以下の所得者に限定するのか、幅広い層を対象とするのかによって、必要となる予算額も変わります。

 

制度の効果と財政負担のバランスをどのように取るのかが重要になります。

論点④ 所得判定を国と自治体でどう分担するのか

4つ目は、対象者を判定するための所得情報をどのように管理・活用するかという点です。

 

給与所得者であれば源泉徴収票、個人事業主などであれば確定申告書、さらに住民税に関する情報などが所得判定の基礎になると考えられます。

 

ただし、これらの情報は国や地方自治体がそれぞれ保有しているため、所得判定に必要な情報をどのように連携するのかが課題になります。

 

国、都道府県、市町村の間で事務分担をどのように設定するのか、行政手続きの効率化と個人情報の適切な管理を両立させる必要があります。

論点⑤ 株式・NISAなど複雑な所得をどう扱うのか

5つ目は、所得判定の対象となる所得の範囲です。

 

給与所得だけでなく、金融所得をどのように扱うのかは重要な論点になります。

 

例えば、利子所得は原則として源泉分離課税となっています。また、株式関連の所得についても、配当所得のほか、申告分離課税制度、確定申告不要制度、特定口座、NISA(少額投資非課税制度)など、複数の制度が存在します。給付対象者を判定する際に、どの所得を含めるのかを明確にする必要があります。

 

さらに、所得判定の単位を本人だけにするのか、「生計を一にする者」まで含めるのかという問題もあります。

 

家族の所得を合算する場合には、配偶者だけでなく、法律上の婚姻関係にないパートナーなどをどのように扱うのかといった派生的な課題も生じます。

制度の成否を左右する「公平で効率的な所得把握」の仕組み

給付付き税額控除を実効性のある制度にするためには、単に給付額や対象者を決めるだけではなく、公平で正確な所得把握の仕組みを整えることが不可欠です。

 

今後、制度導入に向けて法律や施行令などで具体的な内容が定められることになります。その際には、対象者自身が所得状況を確認できる仕組みも重要になります。

 

例えば、「生計を一にする者」の範囲やマイナンバー、所得の内訳などを記載する所得判定表のような様式を設けることも一つの方法です。

 

給付付き税額控除は、低所得者支援と税制改革を組み合わせた制度として期待される一方、制度設計を誤れば、行政コストの増大や不公平感につながる可能性もあります。

 

2029年の導入に向けて、今後どのような制度設計が示されるのかが注目されます。

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

【注目のセミナー情報】​​​

【国内不動産投資】8月8日(土)オンライン開催
《短期償却×安定運用》
実質利回り15%前後も狙える「トランクルーム投資」

 

【事業投資】8月13日(木)オンライン開催
未経験・1人運営でも目指せる
『買取大吉』の高収益モデルの全貌

 

 

【関連記事】

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録