注意④ グラフの見た目に「作成者の思惑」が潜むこともある
次の図表を見て、どの会社が1番成長しているか、考えてみましょう。
実は、A社が1から2に100%成長しており、1番成長しているのですが、そうは見えませんね。B社は10から19に90%成長しています。C社は10から18に80%成長しています。C社のグラフの傾きが大きくなっているのは、右目盛りが0から始まらずに8から始まっているからなのですね。
この手法は、統計使いが統計を使って他人を誤解させる際にもよく用いられるので、気をつけたいものです。
注意⑤ 正しい比較・正しい理解ができなければ無意味な結果に
「米国軍人の死亡率は米国民の死亡率より低い」というのは、おそらく間違いないでしょうが、「だから米軍は安全な所だ」というのは間違っているかもしれません。それは、米国軍人には定年があるので、老衰で死亡する人がいないからでしょう。米軍が安全か否かを考える際には、「20歳から60歳までの健康な米国市民」と比較する必要があるのです。
会社員の配偶者が無職だったとしましょう。ある日からパートで働くようになったら、家計の所得は増えますが、「我が家の勤労者1人当たりの所得」は減ります。それを見て「我が家は貧しくなった」と嘆くのは馬鹿げていますね。
しかし、日本全体として専業主婦がパートで働くようになると、「日本人労働者の平均所得」は下がります。それを見て「日本人は貧しくなった」と考えるのは問題ですね。高齢者についても同様で、定年退職したサラリーマン(サラリーウーマンや公務員等を含む、以下同様)が全員引退すれば、日本人労働者の所得水準は結構高いかもしれないのに、彼らが低い給料で定年後再雇用されると、日本人労働者の平均所得が低く見えます。これも「日本人は貧しくなった」とは言えませんね。
もう1つ。ビジネスマンへのアンケートで、評判最高のホテルと評判最悪のホテルが同じだ、ということが起こり得ます。大きなホテルは高評価も低評価も多くなるからです。
「読み取るべきメッセージは何か」を考える
インフレ率がマイナス0.1%からプラス0.1%に上がったとき、「インフレ率がプラスになった」と騒ぐのか、「大体0%で、変わりない」と落ち着いているのか。筆者は後者の立場ですが、マスコミはそれだとニュースにならないので、前者の報道をするかもしれません。
学者も「正しいこと」を重視するので、「海の水を一口飲んだから海の水が減った」というようなことを言う人が時々います。筆者は「誤差の範囲内だ」と落ち着いていようと思いますが(笑)。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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