「3,500万円あれば大丈夫」…老後に直面した2つの出費
「老後のために3,000万円は残そう」
会社員だった和夫さん(仮名・70歳)と妻の恵子さん(仮名・69歳)は、50代のころからそう話していました。
子ども2人の教育費を払い終えたあと、老後資金づくりを本格化。住宅ローンも60代半ばで完済し、現在の金融資産は約3,500万円です。
夫婦の年金収入は月約22万円。築30年を超える一戸建てで暮らしています。
「退職したころは、ローンもないし、3,500万円残せたなら何とかなるだろうと思っていました」
ところが70歳を迎えるころ、夫婦が想定していなかった問題が出てきました。
一つは自宅です。
以前から気になっていた外壁や屋根に加え、浴室や給湯設備も古くなっています。今後も住み続けるなら、まとめて手を入れることも検討したほうがいいと業者から説明されました。
見積もりを取ると、希望する工事をすべて行えば数百万円規模になります。
「直せない金額ではないんです。でも300万円、400万円と使ったあとに、今度は別のところが壊れたらどうするんだろうって」
さらに同じころ、和夫さんの80代の母親が介護施設へ入居しました。
費用そのものは母親の年金や資産でまかなえていますが、施設探しを手伝うなかで、夫婦は初めて自分たちの介護について具体的に考えたといいます。
「母を見ていたら、自分たちだって10年後、15年後にどうなっているか分からないよねって。そうしたら、家に何百万円もかけていいのかなと思い始めたんです」
老後のために貯めてきた3,500万円。しかし、その「老後」に住宅修繕と将来の介護という、性質の異なる支出が見えてきたことで、かえって使い道を決めにくくなりました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の金融資産額は平均1,769万円、中央値1,000万円。一方、今後の生活に必要だと考える金融資産額は平均2,648万円、中央値2,000万円でした。必要だと感じる金額にも幅があり、「3,000~5,000万円未満」と答えた人も14.6%います。
3,500万円という金額だけを見れば、夫婦が直ちに生活に困る状況ではありません。それでも恵子さんは言います。
「貯めるときは3,000万円という目標があったから簡単だったんです。今は、この3,500万円を家に使うのか、将来のために残すのか。正解が分からなくなりました」
