「せっかく来たんだから」孫2人の帰省で増えていった出費
8月下旬。息子一家を見送ったあと、久美子さん(仮名・68歳)は財布にたまったレシートをテーブルに広げました。
「今年も結構使ったね」
夫の隆さん(仮名・69歳)にそう言いながら計算してみると、息子一家が滞在した4日間と、その準備にかかったお金は予想以上でした。
夫婦の年金収入は月約26万円。金融資産は約2,900万円あり、住宅ローンを完済した一戸建てで暮らしています。
息子は40代で、妻と小学生の子ども2人の4人家族。新幹線で2時間ほど離れた地域に住んでおり、お盆前後には毎年帰省しています。
久美子さんにとって、孫に会える夏休みは楽しみな行事でした。
今年も帰省の日程が決まると、飲み物や菓子、子どもたちが好きな肉や果物を買い込みました。6人分の食事を毎回作るのは大変なので、到着した日は寿司を取り、翌日は焼き肉店へ。孫から「プールに行きたい」と言われれば、みんなで出かけました。
「年に何回も会えるわけじゃないから、来たときくらいはと思うんですよ」
さらに、孫2人にはそれぞれお小遣いを渡しました。息子夫婦から「そんなにしなくていいよ」と言われても、「夏休みなんだから」と久美子さんが押し切るのが恒例になっていました。
ただ、今年は息子一家が帰ったあと、少し違う感覚が残りました。
スーパーでの買い足し、外食、出前、レジャー代、お小遣い。細かな支出まで確認すると、普段の夫婦2人の生活とは明らかに違います。
「払えない金額ではないんです。でも、『せっかく来たんだから』で財布を開いていると、4日間でも結構な金額になるんですよね」
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の可処分所得が22万1,544円に対し、消費支出は26万3,979円。平均では消費支出が可処分所得を4万円余り上回っています。なお、他世帯への贈答品やサービスへの支出は「交際費」に含まれます。
久美子さん夫婦も、年金だけですべての月の支出をまかなえているわけではありません。固定資産税や家電の買い替え、旅行などが重なれば、貯蓄から補います。
2,900万円という残高だけを見れば、すぐに困る状況ではありません。それでも久美子さんは通帳を見ながら、ふと夫に言いました。
「帰ってきてくれるのはうれしいんだけど、毎回この調子で使っていていいのかな」
隆さんも「俺たちも、ずっと同じ収入じゃないからな」と答えました。
夫婦が気になったのは、今年の出費だけではありません。これまでの帰省を振り返ると、「せっかくだから」と財布を開くことを何年も繰り返してきたのです。
