同じUAEの都市でも…アブダビとドバイ、異なる不動産取引実務
筆者が経営するEminence Luxe社の本店はドバイですが、2026年5月7日にアブダビ支店を開設し、ADREC(アブダビの不動産規制当局)の不動産仲介ライセンスを取得しました。2025年になった頃、特にディズニーランドのアブダビ進出が決まってから、アブダビ不動産の問い合わせが急に増えたことが進出の理由です。
一方で、アブダビは、投資区域、広告規制、登記、契約実務の細部、ゴールデンビザの要件などがドバイと異なります。ドバイのライセンスだけで、アブダビの仲介業務は行えません。特に購入した不動産の賃貸付けや売却の手続きはドバイとアブダビでは異なり、ドバイの業者が対応してトラブルになることが増えています。
ドバイとアブダビは同じUAEという国の都市ですが、適用される法律などは異なるので、日本の都道府県の感覚で考えるとトラブルになるのでご留意ください。
成長市場で確認すべき、3つの選定軸
第一は、需要源です。金融、観光、学校、空港、文化施設など、その物件の完成後に誰が住むのかを具体的に考えます。エリア名ではなく、実際の通勤先や生活動線まで確認します。
第二は、供給時期と出口です。ADRECの2025年通期レポートでは、2030年までに住宅ストックが約5.8万戸増える見通しです。供給増は、成長都市に必要なものです。問題になるのは、同じ時期に、同じ価格帯と間取りの物件が1つのエリアへ集中する場合です。引渡し後の賃貸だけでなく、売却時の競合在庫も確認します。
第三は、権利と取引条件です。外国人が購入できる投資区域か、取得する権利は完全所有権か、プロジェクトと売買契約がADRECへ登録されているか、購入代金の入金先が承認済みの分別管理口座かを確認します。新築の完成前販売と中古・転売では、費用や手続きも異なります。
これらは成長の恩恵を、個別物件の成果へつなげるために必要な確認です。
「知られていない市場」から「選んで買える市場」へ
2026年上半期の伸び率が、今後もそのまま続くと考えるべきではありません。前年の市場規模が現在より小さかったことや、大型プロジェクトの販売時期による影響もあります。
それでも、通常の売買、取引件数、海外資金、投資家の国籍、投資区域が同時に増えた事実は軽視できません。しかも、その半年は戦争を挟んだ半年でした。アブダビ不動産は、もはや知る人ぞ知る市場ではなく、ドバイと並べて比較し、目的に応じて選べる市場になりつつあります。
当社は今回、ADRECの公式発表、2025年通期市場レポート、人口・雇用・GDPなどの一次資料を整理し、全44ページの「エミネンス・レポート アブダビ不動産市場 2026年上半期」を公開しました。主要エリアの価格、賃料、供給見通し、外国人所有制度まで、日本円換算を併記してまとめています。詳細と最新の数値はアブダビ版レポートの特設ページでご確認いただけます。
投資で重要なのは、注目が集まった後に慌てて追いかけることではありません。市場の成長を確認したうえで、自分の投資期間、求める収益、出口に合う物件を選ぶことです。
アブダビは、ドバイに取って代わる市場ではなく、UAE不動産のもう一つの選択肢です。2026年上半期は、その変化が公式データにはっきり表れた半年だったと、筆者は見ています。
※ 『エミネンス・レポート2026上半期』(https://eminenceluxe.com/eminence-report)
森 和孝
Eminence Luxe(ドバイ不動産仲介会社)Founder/CEO
One Asia Lawyers 国際弁護士(UAE法、シンガポール外国法、日本法)
