(※写真はイメージです/PIXTA)

海外へ資産配分を行う富裕層たちの間で人気が高まっているUAE・ドバイ。この国への投資は、どのような特徴・メリットがあるのでしょうか。ここでは、不動産を中心に見ていきましょう。世界をフィールドに活躍する弁護士・森和孝氏が、ドバイの最新事情を解説します。

外国人にも開かれた不動産制度

ドバイでは海外では珍しく、外国人でも完全所有権(フリーホールド)で不動産を購入でき、シンガポールのような外国人への追加課税もありません。登記手続きも比較的簡素で、短期間で完了します。これは多くのアジア諸国や欧州の一部国々と比較して、外国人投資家にとって大きなアドバンテージとなっています。

 

政府は外国人投資家を呼び込むための制度改革を継続的に実施しており、ゴールデンビザ(長期居住ビザ)制度やビジネスフレンドリーな規制環境の整備などを通じて、国際的な投資家にとっての魅力を高めています。

高い投資利回りと価格上昇率

Property Monitor社のデータによると、2023年のドバイの高級不動産価格は前年比約15~20%上昇しており、JLL社の市場レポートによれば、プライム物件の利回りは6~9%で、東京(2~3%)やロンドン(3~4%)を大きく上回ります。

 

実際、東京の一等地・高級住宅の賃貸利回りはおおむね2~3%程度に留まりますが、ドバイでは物件タイプやエリアによりますが、高級住宅地でも約6%前後、新興住宅エリアでは8~10%台の高利回りも珍しくありません。国際比較でも、ドバイの賃貸利回りは世界でもトップクラスの水準です。

 

これらの高い利回りは、継続的な人口増加と経済成長に支えられており、特に高所得外国人の流入が高級物件の需要を押し上げています。また、ドバイ政府による「Dubai 2040 Urban Master Plan」など、長期的な都市計画の明確さも、不動産市場の安定性と成長に寄与しています。

革新的な不動産投資の仕組み

2025年3月、ドバイ土地局(DLD)は不動産権利書のトークン化プロジェクトを開始しました。これはブロックチェーン技術を活用し、少額から不動産投資が可能になる革新的な取り組みです。政府主導での不動産のトークン化は世界でも初の試みであり、2033年までにトークン化不動産市場規模が約600億ディルハム(約1.6兆円)に達し、ドバイ全不動産取引の7%を占めると試算されています。

 

政府認可の不動産トークンは、民間ベースの暗号資産と異なり、実物資産に裏付けられ政府保証があるという大きな優位性があります。ドバイ仮想資産規制当局(VARA)と土地局の連携による包括的な規制枠組みにより、第三者対抗力の点でもトークンと不動産所有権が完全に紐づく制度の実現を目指しています。

 

このシステムにより、従来は高額なため参入障壁が高かった不動産投資が、より少額から、より流動性の高い形で、しかも安全に投資することが可能になります。たとえば、少額の余剰資金からでも複数の物件に分散投資したり、相続対策として家族で持ち分を分割したりすることが容易になります。

不動産市場の透明性と規制環境

ドバイの不動産市場は過去数十年で大きく成熟し、透明性と規制の面で大幅な改善を遂げています。JLLの「グローバル不動産透明度指標」では、UAEは継続的に順位を上げており、中東・北アフリカ地域でトップの透明性を誇ります。

 

ドバイ土地局(DLD)による統一的な不動産登記システムと、透明性の高い取引プラットフォームの導入により、投資家は信頼性の高いデータに基づいて投資判断を行うことができます。また、不動産開発業者に対する規制も強化され、エスクローアカウント制度の義務化など、買主保護のための制度が整備されています。

戦略的な立地選定とポートフォリオ構築

ドバイの不動産投資においては、立地選定が極めて重要です。エリアによって価格、賃貸利回り、流動性、将来性が異なるため、投資目的に合わせた選定が求められます。

 

高級物件が集中するPalm JumeirahやDowntown Dubaiなどのプライムエリアは、価値の安定性と国際的な認知度の高さが魅力です。一方、Dubai Hillsなどの新興高級エリアや、Emaar Southなどの新規開発エリアは、将来的な価値上昇の可能性が高く、中長期的な資産形成に適しています。

 

投資ポートフォリオ構築の観点からは、複数の異なるエリアや物件タイプに分散投資することで、リスク分散とリターン最適化を図ることが重要です。たとえば、安定した賃貸収入を得るための高利回り物件と、将来的な値上がり益を狙うプライムエリアの物件を組み合わせるなど、バランスの取れたポートフォリオ構築が望ましいでしょう。

法的側面と相続対策としての有効性

UAE、特にドバイの不動産保有は、国際的な資産防衛と相続対策の観点からも有効です。UAEには相続税が存在せず、適切な法的枠組みを整えることで、次世代への資産移転をスムーズに行うことができます。

 

特に注目すべきは、2015年に導入された非イスラム外国人向けの遺言登録制度(DIFC Wills Service Centre)です。これにより、外国人投資家はコモンロー原則(米国や英国等で採用されている法体系)に基づく遺言を作成・登録することが可能となり、英語でかつイスラム法ではない方法で資産分割を実現できるようになりました。

 

また、オフショア会社を通じた不動産保有も一般的であり、資産保護や税務計画の観点から、多くの国際投資家が活用しています。ただし、こうした構造の設計には専門的なアドバイスが不可欠であり、投資家の居住国の税制や法制度に十分配慮した上での計画が必要です。

小括:二拠点戦略の実現に向けて

本稿では、日本が直面する構造的課題、世界的な富裕層の動向、UAEの成長ポテンシャル、そしてドバイ不動産市場の特性について比較横断的に分析してきました。これらの要素を総合的に考慮すると、「日本×ドバイ」の二拠点戦略は、現代の富裕層にとって理にかなった資産防衛・資産形成アプローチであると言えると思います。

 

しかし、こうした国際的な資産戦略を成功させるためには、単なる不動産購入にとどまらず、総合的なアプローチが必要です。税務、法務、相続計画、リスク管理など多面的な観点から専門家によるアドバイスを受けることが重要です。

 

 

森 和孝
Eminence Luxe(ドバイ不動産仲介会社)Founder/CEO
One Asia Lawyers 国際弁護士(UAE法、シンガポール外国法、日本法)

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