(※写真はイメージです/PIXTA)

先行き不透明な時代、従来型の投資スキームではなかなか収益が上げられない現状があります。本格的な資産形成を考える場合、新しい着眼点が必要だといえそうです。世界をフィールドに活躍する弁護士・森和孝氏が、ドバイの最新事情を解説します。

2025年のIMF予測成長率「約4%以上」の背景

ドバイを含むUAEの経済成長率は、過去10年間で年平均3〜4%を維持してきました。とくに注目すべきは、2025年のIMF予測成長率が約4%以上と見込まれている点です。これは同期間の日本(0.6%)はもちろん、シンガポール(約2.0%)や香港(約2.5%)といった成熟した経済圏を大きく上回る数字です。

 

ドバイ単独では、非石油部門の成長率は年間約4.5%と堅調で、とくに観光業(GDPの約12%)、小売業、不動産、金融サービスなどが牽引役となっています。COVID-19後の2022年には4.7%、2023年にも約3.6%の成長を達成し、世界経済の減速にもかかわらず力強さを示しました。

 

また、1人当たりGDPで見ると、ドバイは約5万2,000ドル(2023年)と、シンガポール(約9万ドル)には及ばないものの、香港(約5万ドル)と同等の水準に達しています。しかも成長率を考慮すると、今後数年でさらに上昇する可能性が高いでしょう。

 

この持続的成長の背景には、以下のような要因があります。

 

1. 多角化された経済構造

石油依存からの脱却に成功し、観光、貿易、金融、不動産など多様なセクターが経済を支えています。

 

2. インフラへの継続的投資

世界最高水準の空港、港湾、道路、通信網など、ビジネスに不可欠なインフラが整備されています。

 

3. 国際イベントの戦略的活用

2021-22年の「ドバイ・エキスポ2020」、毎年開催される「ドバイ・エアショー」、中東最大の食品展示会「ガルフード」などが成長を後押ししています。

 

4. 地域ハブとしての地位確立

中東・アフリカ・南アジア市場への玄関口としての役割が、多国籍企業の進出を促進しています。

 

シンガポールや香港が達成した持続的成長モデルと比較すると、ドバイはより短期間で同様の成功を収めつつある点が特筆されます。両都市が数十年かけて築いた国際的地位を、ドバイはわずか20年で実現したのです。

急速&持続的な人口増加、2040年までに580万人との推計も

ドバイの経済成長を支える最も重要な要素のひとつが、急速かつ持続的な人口増加です。ドバイの人口は2010年の約200万人から2025年には約400万人と、15年間でほぼ倍増。年率5〜10%という驚異的な増加率は、シンガポールや香港をはるかに上回っています。

 

さらに注目すべきは将来予測です。ドバイ統計センターの推計によると、2040年までにドバイの人口は580万人を超え、最大シナリオでは700万人に達する可能性があります。これは現在の1.5〜2倍の規模であり、今後も持続的な成長が見込まれていることを示しています。

 

対照的に、シンガポールは人口約600万人で10年間で1割増えたものの成長率が鈍化しており、将来予測でも2030年までに650万人程度と緩やかな増加にとどまります。香港に至っては、2019年以降の政治情勢変化により人口減少に転じており、とくに高技能人材の流出が懸念されています。

 

ドバイの人口増加の特徴は、その構成にもあります。増加の大部分は海外からの専門職や起業家、投資家などの流入によるものです。2024年のHenley & Partnersレポートによれば、富裕層の国際移動において、ドバイは3年連続で世界最大の受入先となり、約6,700人の百万長者(ミリオネア)がドバイを新たな拠点として選択しました。これはシンガポール(約3,500人)の約2倍の数字です。

 

この「人口ダイナミズム」は、単なる人口規模の拡大にとどまらず、質的な面でも重要です。高度な技能を持つ国際的な人材の流入は、消費市場の拡大だけでなく、イノベーションの促進や生産性向上にも寄与しています。シンガポールも同様の人材誘致に注力していますが、ドバイは優遇税制や優れた生活水準の提供により、より多くの人材獲得に成功しています。

約92%が外国人居住者…「高い外国人依存度」の意外な強み

ドバイ、シンガポール、香港はいずれも高い外国人比率を特徴とする都市ですが、その構造と持続可能性には顕著な違いがあります。

 

ドバイ(UAE)の人口のうち、自国民(エミラティ)はわずか約8%、残りの約92%は外国人居住者です。これは国際的に見ても極めて高い外国人比率であり、シンガポールの外国人比率約40%、香港の約8%を大きく上回ります。

 

この高い外国人依存度は、一見すると脆弱性を示すように思えますが、実際には以下のような強みをもたらしています。

 

1. 自国民保護政策の自然抑制

人口の大多数が外国人であるため、極端な「自国民優先」政策を取ることが政治的・経済的に難しく、必然的に開放的な経済政策が維持されています。

 

2. 政策の一貫性と予測可能性

外国人依存度の高さが開放的な経済体制を必須とするため、国内政治による経済政策の急変リスクが極めて低く、長期的な投資環境の安定性が保たれています。

 

3. グローバル人材の機動的な活用

労働市場の柔軟性が高く、経済ニーズに応じた人材獲得が可能です。

 

4. 多様性がもたらすイノベーション

 200以上の国籍の人々が共存することで、多様な視点やアイデアが生まれています。

 

5. 消費市場の国際性

さまざまな国籍の居住者が国際的な消費パターンを形成し、小売・サービス産業の多様化を促進しています。

 

同時に、この人口構成は外国人居住者にとって独自の優位性をもたらしています。

 

1. 「外国人差別」の構造的不在

多くの国で外国人は少数派として排除に直面しますが、ドバイでは外国人が多数派であるため、日常生活における差別や排除の経験が極めて少ない社会環境が実現しています。

 

2. 英語中心の実用的な言語環境

多様な国籍の人々が共存するため、事実上の共通言語として英語が広く使用され、アラビア語を学ばなくても職業生活や日常生活に支障がありません。

 

3. 多文化共存の日常化

さまざまな文化・宗教の人々が日常的に共存する環境が整っており、自国の文化や宗教的習慣を維持しながら生活することが可能です。

 

4. 適応の容易さと受入インフラの充実

外国人受入が経済の基盤であるため、住居取得、銀行口座開設、子女教育など、外国人の生活立ち上げをサポートするシステムが充実しています。

 

一方で、課題も存在します。居住ビザの更新が必要な外国人労働者の流動性は、景気後退時に急速な人口減少をもたらす可能性があります。また、労働力の大部分を外国人に依存することで、自国民の雇用創出という政治的課題も生じます。

 

シンガポールもこうした課題に直面し、2010年代には外国人労働者の流入抑制政策を導入しました。香港は「一国二制度」の枠組みのなかで独自の移民政策を維持していますが、近年の政治変化により国際人材の流出が加速しています。

 

ドバイがこれらの課題にどう対応しているかを見ると、以下のような特徴があります。

 

1. 自国民雇用政策と外国人登用のバランス

抑制的な「エミラタイゼーション」(=20人以上雇用する企業に1名以上のUAE人の雇用を義務付けるなどの自国民雇用促進政策)を推進しつつも、外国人に大きく開かれた労働市場を維持しています。

 

2. 長期居住の奨励

世界的にも圧倒的に取りやすいと称されるゴールデンビザなどの長期居住権制度を導入し、外国人の定着率向上を図っています。

「外国人が主役」という社会システム

これらの政策により、ドバイは高い外国人比率にもかかわらず、社会的安定と経済成長の両立を実現しています。

 

この点は、外国人依存度が比較的低いシンガポールや香港とは異なるアプローチであり、ドバイ独自の発展モデルを形成しています。また、「外国人が主役」という社会システムは、世界中から優秀な人材を引きつける強力な磁石となっており、ドバイの持続的な成長を支える重要な要素となっています。

 

 

森 和孝
Eminence Luxe(ドバイ不動産仲介会社)Founder/CEO
One Asia Lawyers 国際弁護士(UAE法、シンガポール外国法、日本法)

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