ディズニーとスフィア…ヤス島に集まる2つの巨大プロジェクト
2025年5月7日、ウォルト・ディズニー・カンパニーとアブダビの開発会社ミラルが、ヤス島にディズニーのテーマパーク・リゾートを建設する契約を発表しました。ディズニーにとって世界で7番目、中東では初めてのパークです。開発・運営はミラルが担い、ディズニーが創造面の設計と運営の監修を行います。
注目すべきは立地です。ディズニー・エクスペリエンス部門会長のジョシュ・ダマロ氏は、この場所を「我々のポートフォリオの中でも際立って独特で、美しいウォーターフロントに抱かれている」と表現しました。海に面したテーマパークというのは、ディズニーの既存6拠点にはない条件です。同社はまた、この場所が世界人口の約3分の1から飛行機で4時間圏内にあるとしています。日本の羽田・成田からも直行便で結ばれる距離です。
開業時期はまだ公表されていません。ダマロ氏はロイターの取材に、設計に1〜2年、建設に4〜6年と述べており、逆算すると2030年から2033年の間ということになります。用地についても、ディズニーは正式には公表していません。ただし2026年1月25日、ボブ・アイガーCEOが「いつの日かディズニーランド・アブダビになる土地を歩いている」というコメントとともに現地写真をSNSへ投稿し、その背景から、ヤス島北部の未開発の海岸線であることが有力視されています。
もう1つが、先ほど触れたスフィア・アブダビです。2023年にラスベガスで開業し、球体の外壁全面と内部が巨大なLEDで覆われた、あの施設の米国外初の展開になります。場所はヤス・モールとシーワールド・アブダビの間、収容人数は最大2万人、完成は2029年末が予定されています。
不動産の観点から、この2つには3つの意味があります。第一に、時間軸です。スフィアの2029年、ディズニーの2030年代前半という時期は、いま販売されている完成前物件(オフプラン)の引き渡し時期と重なります。つまり、今から購入する物件の多くは、この2つが動き出す局面で運用期に入ることになります。
第二に、需要の質です。テーマパークは観光客だけでなく、建設・運営に従事する雇用を大量に生みます。観光需要は情勢に左右されますが、雇用に基づく居住需要はより安定します。
第三に、供給の限界です。ヤス島は人工島であり、面積が決まっています。開発が進むほど、パークに近い立地は再生産できない資産になります。当社が追うヤス島の物件動向も、この供給の限界を前提に見ています。
ただし、冷静な留保も必要です。ディズニーの開業時期は未定であり、用地も正式発表ではありません。スフィアの2029年完成も予定です。大規模開発が計画どおりに進まない例は世界中にあります。ディズニーが来るから上がるという一要素だけで投資判断をすべきではない、というのが筆者の立場です。
「パークの花火が見える部屋がほしい」にどう応えたか?
ディズニーの発表以降、当社にはある相談が増えました。「パークの花火が見える部屋を買いたい」というものです。
正直、この依頼に完璧な答えを出すことは、現時点では誰にもできません。パークの詳細な設計図は公表されておらず、花火が上がるのか、上がるとしてどこから上がるのかも確定していないからです。用地の正式発表すらありません。ですから当社は、まずその前提をお客様に率直にお伝えします。確約はできません、と。
そのうえで、できることはあります。当社が実際に行ったのは、次のような作業でした。まず、対象となりうる各プロジェクトのデベロッパーに個別に接触し、公表されていない範囲も含めて、区画の位置関係、建物の高さ、住戸の向きについて確認を重ねました。次に、都市計画図と土地利用の情報から、公式に開示されている情報の範囲でパーク用地として想定される区域を絞り込みました。
さらに、その区域と各住戸を結ぶ視線上に、将来何が建ちうるのかを調べました。せっかくの眺望も、数年後に前面へ高層棟が建てば失われるからです。最後に、これらを重ね合わせて、「現時点の情報で、可能性が最も高いと考えられる住戸」を絞り込み、その根拠と、なぜ確約できないのかをセットでお客様にご説明しました。
そして、実務としてはここからが本番でした。そうした住戸は、当然ながら人気が集中します。販売開始と同時に押さえに行き、デベロッパーとの関係の中で、その一戸を確保しにいく。この部分は、市場データの分析ではなく、現地で日々取引している業者としての仕事です。
この一件は、いまのアブダビ市場の本質をよく表していると思います。大きな発表が相次ぐ市場では、情報と現実の間に必ず空白が生まれます。その空白を、憶測で埋めて売るのか、確認できることと確認できないことを分けて示すのか。筆者は後者でありたいと考えています。花火が見えるかどうかは、正直なところ、開業してみないと分かりません。それでも、確認できる限りの材料を集めて確率を上げ、その限界も含めてお伝えする――それが、確定情報の少ない成長市場で、筆者たちが提供できる価値だと考えています。

