夫「すまん、働いてくれ…」→「今さら無理よ!」と断固拒否の専業主婦歴40年・61歳妻に懇願。退職金3,000万円を受け取った大企業元本部長の69歳夫が、妻に頭を下げた理由【FPが解説】

夫「すまん、働いてくれ…」→「今さら無理よ!」と断固拒否の専業主婦歴40年・61歳妻に懇願。退職金3,000万円を受け取った大企業元本部長の69歳夫が、妻に頭を下げた理由【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を迎え、悠々自適な老後を送るはずが、減り続ける通帳の残高を見て青ざめる……。そんな事態に陥る元・高所得世帯は意外に多いようです。本記事では、山本夫婦(仮名)の事例を通して、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が、高収入だった人が老後破産に陥りやすい理由について解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。

「俺が稼いだ」「私だって家を守った」深まる夫婦の亀裂

最も支出を圧迫していたのは、当然ながら山本さん自身の交際費で、ゴルフ代、交通費、宿泊費、飲食代など。一方で洋子さんのほうも、長年子育てと家事を優先してきた反動から、友人との高級ホテルランチや有名店のスイーツ巡り、ブランド品ではないものの洋服の購入などが楽しみになっていたのです。

 

公的年金に対し、毎月55万円の赤字。現在、公的年金と個人年金保険の受取額が合わせて28万円程度であるため、預金のマイナスを食い止めるには、月47万円の支出削減が必要だと試算されました。

 

FPの前で支出の見直しを巡る話し合いをしたものの、夫婦で口論になってしまいました。互いに、相手の支出ばかりが気になるからです。

 

山本さんが「俺が40年間働いて稼いできた金だ」と主張すれば、洋子さんは、「その40年間、私は仕事も辞めて一人で家と子どもを守ってきた」と言い返します。

 

そんなやりとりを2年以上も繰り返してしまったそうです。結局、特段の進展もないまま月日が流れました。山本さんはひとまず単発のアルバイトを始めましたが、到底追い付かず。終身保険の一部を解約して資金を用立ててきました。

 

そしてある日、山本さんは通帳を見つめながら、初めて妻へ頭を下げます。

 

「……すまん。働いてくれないか」

 

洋子さんは少し間を置き、静かに答えました。

 

「今さら無理よ。40年間家庭だけで生きてきた私が、60歳を過ぎてなんの仕事ができるの?」

 

その一言に、山本さんは返す言葉がありませんでした。

高収入だった人ほど陥りやすい「生活水準が下げられない老後」

総務省「家計調査(2025年)」によると、高齢夫婦無職世帯では毎月の実収入を支出が上回り、多くの世帯が預貯金の取り崩しによって生活している実態がうかがえます。また、金融広報中央委員会(現・J-FLEC)の調査をみても、現役時代に年収が高かった世帯であっても、退職後に十分な金融資産を残せていないケースは決して珍しくありません。

 

収入が高いほど生活水準も上がりやすく、その生活が当たり前になるためです。特に経営者や役職者だった人は、ゴルフや会食、人付き合いなどを仕事の一部として続けてきた人も多いでしょう。現役のころは交際費を会社の経費で処理で来たケースも多く、リタイア後にそれらをすべて自分の収入の中から支払うとなれば負担は大きくなります。そのままの生活を続ければ、資産は想定以上のスピードで減っていくのです。

 

打開策の一つとして老後の収入を増やすという手もあります。しかし、長年専業主婦だった配偶者に対し、突然「働いてほしい」と求めることは簡単ではありません。40年間家庭を守ってきた人にとって、60代から社会へ出ることは精神的な負担も大きいでしょう。

「家計の見える化」と「価値観の共有」

退職金や年金が多いからといって、安心できる老後が約束されるわけではありません。高収入だった人ほどむしろ、以前より生活水準を下げなければならないことがストレスになってしまうことも。一般的な収入だった家庭のほうが生活水準を下げずにいられるため、順応しやすく、生活の満足度が高くなることは珍しいことではないのです。

 

だからこそ大切なのは、現役時代から老後を見据えて「どんな生活が自分たちにとっての幸せなのか」を夫婦で話し合っておくこと。まずは収支を感覚ではなく数字で見える化し、それぞれの支出の、自分たちにとっての重要度を一つひとつ考えていきます。それを夫婦で共有し合い、優先順位に沿ってお金を使いましょう。そうやって限られた資産を、自分たちが最も幸せを感じられることへ使うための生活設計が必要です。

 

夫婦で納得できる対策を講じられるよう、努めていきましょう。

 

 

小川 洋平

FP相談ねっと

ファイナンシャルプランナー

 

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