岸田内閣の「定額減税」――複雑な制度設計への批判
岸田内閣(2021年10月4日-2024年10月1日)は、2023年の経済対策に基づき、各種給付金および定額減税を実施しました。
① 給付金の対象となったのは、以下の通りです。住民税非課税世帯および均等割のみ課税される世帯は、減税の対象にならないことから「定額減税補足給付金」として、世帯主に10万円、18歳以下の児童1人当たり5万円が給付されました。
② 住民税および所得税を納付している者は、2024年分の所得税から3万円、同年分の個人住民税所得割から1万円が減税され、控除しきれない場合は1万円単位で給付されました。
上記の②については、企業の経理担当者及び給付の作業をする地方自治体の担当者から、複雑すぎて事務量が増加するという批判が多く、減税を受けた者からもこの制度を歓迎する声は少ないものでした。
4つの給付・減税策から見えてきたもの
給付付き税額控除導入前の段階で、1998年以降、特別減税および3度の定額給付金等の経済対策が以下のように行われました。
② 定額給付金(09年給付)
③ 特別定額給付金(20年給付)
④ 2023年定額減税
上記①は、定率減税として減税額の上限を設け、高所得者への恩恵を規制しました。②と③は、所得階層に関わらない一律の減税・給付であったことから、③については、給付のほとんどが貯蓄に回ったとする財務相の発言がありました。④は、減税と住民税非課税世帯等への給付という、①から③までとは異なる形態でしたが、制度が複雑であるなどの批判が多く、その効果を評価する声は少ないものでした。
給付付き税額控除は、これまでと何が違うのか
給付付き税額控除は、2007年の福田内閣当時から検討対象となっていましたが、諸外国の同制度の分析にとどまり、将来の導入は視野に入っていたものの、具体的な取り組みには至っていませんでした。
2023年の定額減税は、減税と住民税非課税世帯等への給付の2本立てで、定額控除と給付金が一体化していませんでした。そこで、2025年9月19日に、自民党(石破内閣)・公明党・立憲民主党の3党首(石破茂首相、斉藤鉄夫代表、野田佳彦代表)による会談が国会内で行われ、給付付き税額控除の協議体を設けることが合意されたことにより、給付付き税額控除導入の方向が定まり、2026年2月の高市総理による2年間の食料消費税ゼロをつなぎ策として、給付付き税額控除の導入が進められることになりました。
2026年4月1日の報道によれば、給付付き税額控除を検討している国民会議では、家族の所得の合算や本人の資産所得の把握等のためにマイナンバーカードの利用を前提とすると制度設計に時間がかかりすぎることから、これらを省いた簡易型の導入を求める意見が出ているとのことです。今後の焦点は、給付付き税額控除をどの程度の規模で実施するか、その財源をどう確保するかという各論部分に移り、調整が行われた上で、7月には2029年導入で大筋合意しています。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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