2022年4月1日より、大企業・中小企業を問わず、企業のハラスメント対策が法律で義務化されました。社会のコンプライアンス意識は劇的に向上した一方で、適切な指導とハラスメントの境界があいまいになり、現場からは「部下のミスを注意できない」「雑談するのが怖い」といった声を耳にするように。さらに、部下から上司への「逆パワハラ問題」も注目を集めるようになりました。ハラスメントを恐れて部下に必要な指導ができなくなってしまった上司の事例を通して、個人の配慮に依存しない具体的なコミュニケーションの仕組みをつくる方法を専門家とともに探ります。

優しさがモンスター部下を生んでしまう皮肉

北野さんは、C子さんからどれだけ暴言を言われても決して言い返すことはありませんでした。その背景には、感情を出せばパワハラになる可能性があるという懸念と、「昔の自分と同じ思いを部下にさせたくない」という思いがありました。

 

北野さんは、新人時代に上司から理不尽な叱責を受け、人格を否定するような言葉を言われた経験がありました。当時の経験から、自分が上司になったら絶対に同じことはしないと心に決めていたのです。その結果、「指摘することに慎重になりすぎていた」と語ります。

 

「違和感があってもすぐには言わず、関係性を壊さないことを優先する。今ならわかりますが、それは優しさではなく"責任の放棄"に近いものでした。彼女の違和感を流したことで、この人にはこういう接し方で問題ないと認識されてしまったのだと思います」

 

いつの間にか、上司に不満をぶつける時代に

北野さんが新人の頃は、「仕事は見て覚えろ」「部下は上司に逆らうな」という考えが当たり前だったと言います。

 

しかし、最近では「仕事は1から10まで上司が教えるもの」という考えが強く、上司に対して遠慮なしに不平不満をぶつけてくる人が増えてきたと話してくれました。実際に、C子さんからは「前の上司はもっと丁寧に教えてくれた」と不満を言われたことがあるそうです。

 

現在、北野さんは新しい職場に転職し、充実した毎日を送っています。「覚えることはたくさんあって大変ですが、人間関係が良くて仕事が楽しいです」と笑顔で語ります。

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