1年間続いた部下からの人格否定
北野春夫さん(仮名・47歳)は、27年勤めていた会社を、部下からの「逆パワハラ」が原因で退職しました。地方都市のA支店で法人営業の仕事をしていた北野さんは、2024年にB支店へ異動。支店長として、7名の部下のマネジメントを担当することになりました。そのうちの一人が、のちに北野さんに逆パワハラを行うことになるC子さん(仮名・38歳)です。
初対面でのC子さんの印象は、決して悪いものではありませんでした。しかし、北野さんがC子さんの仕事の対応を注意したことで状況は一変します。
ある日、C子さんが対応したお客さまの件で、別の部署から問い合わせがありました。C子さんに状況を確認しようとした北野さんは、C子さんから「そんなのお客さまに直接電話して聞けばいいじゃないですか」と返されます。
「そこで僕、彼女に注意してしまったんですよね。これまでは自分が担当していたお客さまの対応も上司にやらせていたの?って。責めるつもりは全くなかったので、これからは自分のことは自分で責任をもって対応してほしいとお願いして終わりました」
一度の注意が逆パワハラの火種に
C子さんは、その場では北野さんの指摘を受け入れてくれたように見えました。しかしその翌日、北野さんに対して「自分の仕事は自分でと言うなら、あなただってほかの人に仕事を頼んでますよね? それは担当者の仕事じゃないんですか?」と怒りをぶつけてきたのです。
論点をすり替えられたことに戸惑った北野さんは、何も言い返せませんでした。そして、その日を境にC子さんの言動はエスカレートしていきます。
「あなたは管理者として失格です」
「ちゃんと私の話、聞いてました? 聞いてたらそんなこと言わないですよね?」
「もう何十年もこの会社で働いているのに、どうしてそんな動きしかできないんですか?」
毎日のようにC子さんから人格否定の言葉を浴びせられ、北野さんは心身のバランスを崩していきました。
朝、職場の前に立つだけで動悸がする。支店のドアを開けるためにカギを差し込もうとすると、手が震えだしてしまう。C子さんの名前を見るだけで胸が締めつけられる。食事がのどを通らなくなり、86kgあった体重は2週間で73㎏になりました。心臓の動悸と不安感を抑えるための薬を飲まなければ日常が維持できない。北野さんの身体は限界を迎えていました。

