(※写真はイメージです/PIXTA)

離職や心身の不調をきっかけに、成人した子どもが実家へ戻ることがあります。親は「しばらく休めば立ち直れる」と考え、生活を支えようとするでしょう。しかし期限を決めないまま同居が長引くと、親の高齢化とともに、家計や家事だけでなく、子どもの将来への不安も大きくなっていきます。

「半年くらい休めばいい」45歳の息子を迎えた母

「仕事を辞めた。しばらく実家に置いてほしい」

 

長男の直人さん(仮名)が45歳のとき、母の和子さん(仮名・75歳)にそう連絡してきました。

 

直人さんは大学卒業後、営業職として20年以上勤務していました。しかし管理職になってから仕事量が増え、体調を崩して退職。妻とは数年前に離婚しており、子どもはいません。賃貸住宅の家賃を払い続けることも難しくなり、実家へ戻ることになりました。

 

和子さんは夫を8年前に亡くし、戸建てで一人暮らしをしていました。年金は月約15万円、預貯金は約1,200万円。住宅ローンはありません。

 

「半年くらい休めばいい。また働けるようになるから」

 

そう言って、二階の空き部屋を直人さんに使わせました。

 

当初、直人さんには失業給付があり、毎月3万円を生活費として入れていました。家事も分担し、求人情報を確認している様子もあったため、和子さんは深く心配していなかったといいます。

 

ところが応募先から不採用の連絡が続くと、直人さんは次第に外へ出なくなりました。

 

「今までの経験を生かせる仕事がない」

 

「給料が半分になるなら、働く意味がない」

 

そんな言葉が増え、失業給付が終わるころには生活費も入れなくなりました。和子さんが仕事の話をすると不機嫌になるため、尋ねることも避けるようになります。

 

そのまま5年が過ぎました。50歳になった直人さんは、昼過ぎに起きてインターネットを見ながら過ごし、食事や洗濯は和子さんに任せています。

 

食費と光熱費は、同居前より月約3万円増えました。固定資産税や家電の買い替えもあり、和子さんは毎年、預金を取り崩しています。

 

総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が月11万8,465円である一方、消費支出は14万8,445円。平均でも手取り収入だけでは支出を賄えておらず、成人した子どもの生活費まで負担すれば、老後資金の減少はさらに早まります。

 

「息子を追い出したいわけではありません。でも、私がいなくなったあと、この子がどうなるのか。そればかり考えるようになりました」

 

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