これは私のお金でしょ?…25年以上にわたって亡き父が管理していた「娘名義の預金」。長女が税理士の判断を〈真っ向否定〉も、裁判であっさり負けたワケ【税理士が「名義預金」の帰属判断について解説】

これは私のお金でしょ?…25年以上にわたって亡き父が管理していた「娘名義の預金」。長女が税理士の判断を〈真っ向否定〉も、裁判であっさり負けたワケ【税理士が「名義預金」の帰属判断について解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税対策として、親が子どものために「子ども名義」で預金を作ることは珍しくありません。しかし、この「名義預金」は、相続税の場面でトラブルになりやすい財産のひとつです。本記事では、相続税評価における預貯金の基本的な評価方法と、名義預金が問題となる理由を、実際の裁判例をもとにくわしく解説します。

「500万円の出所」が争点に

吉田課長「でも、父は原告名義の預貯金を一部解約したんですよね」

 

はい。約382万円分を解約しています(下記2.(9)②ハa)。しかし、これでは自宅隣接地の購入に必要だった手付金500万円(前掲2.(6))には足りません。

 

そこで亡乙は、解約した約382万円のうち一部を現金で払い戻し、残りを自身名義の普通預金口座へ入金しました。そのうえで、亡乙名義の普通預金口座から500万円を出金し、原告に渡したのです(下記2.(9)②ハa・b)。

 

原告名義の預貯金は他にもありましたが、解約しませんでした(上記2.(9)③ハb)。ここで、「なぜ解約しなかったのか?」という疑問が生じます。

 

もし亡乙が、500万円以上の手取りになる原告名義の預貯金を解約し、そのまま原告へ渡していたなら、税務署の受け止め方は少し違っていたのではないかと思います。

 

また、「この預貯金は預かり物である」という自覚は、贈与したすべての相続人とその子ども名義の預貯金に一貫して反映されていなければなりません。本件では、亡乙にその自覚が徹底していなかったことが、敗因であると考えられます。

 

2.親族名義預貯金の帰属に関する裁判例

(9)原告の主張と、東京地裁による事実認定、結論

①原告の主張

イ.亡乙は原告に対して、昭和55年頃から毎年、贈与税の非課税枠の範囲内で贈与する旨を約束をしており、その贈与契約に基づいて原告ら名義の本件申告預貯金が預け入れられた。したがって、これらは贈与の履行である。

 

この場合、預入額は贈与税の基礎控除額(60万円、平成13年以降は110万円)以内であるため、贈与税は課税されない。

 

ロ.自宅隣接地の購入に際し、亡乙から500万円を受け取ったことについては、原告が亡乙に相談したところ、亡乙は原告名義の定期預金を事前に解約して準備し、平成14年6月3日に500数十万円を帰省した原告へ渡した。

 

②東京地裁による事実認定

イ.亡乙の行為について

a.亡乙は相続税対策として、毎年のように、贈与税の非課税枠内で、原告ら親族名義で預貯金の預け入れを行っていた。

b.本件申告預貯金等に係る口座はいずれも、亡乙自身の財産を原資として開設されたものである。

c.2.(5)~(7)の事実

 

ロ.原告(長女)、丁(長男)の行為について

a.平成11年の名義・住所変更手続き以前、原告ら名義の預貯金の全容を正確に把握していたとはいえない。

b.丁(長男)が亡乙の生前に本件申告預貯金等の存在を認識していたと認めるに足りる証拠はない。

 

ハ.①ロ.の500万円の出所について

a.平成14年5月2日と20日に解約された原告名義の預金は合計382万9,498円(前者:72万7,948円。現金払い戻し、後者:310万1,550円。亡乙名義の普通貯金口座に入金)であり、500万円には届かない。

b.平成14年6月3日に亡乙名義の普通預金口座から出金された金額、および翌日に原告名義口座へ入金された金額はいずれも500万円である。

ニ.贈与契約書

本件申告預貯金等を贈与する旨の書面は作成されていない。

 

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