これは私のお金でしょ?…25年以上にわたって亡き父が管理していた「娘名義の預金」。長女が税理士の判断を〈真っ向否定〉も、裁判であっさり負けたワケ【税理士が「名義預金」の帰属判断について解説】

これは私のお金でしょ?…25年以上にわたって亡き父が管理していた「娘名義の預金」。長女が税理士の判断を〈真っ向否定〉も、裁判であっさり負けたワケ【税理士が「名義預金」の帰属判断について解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税対策として、親が子どものために「子ども名義」で預金を作ることは珍しくありません。しかし、この「名義預金」は、相続税の場面でトラブルになりやすい財産のひとつです。本記事では、相続税評価における預貯金の基本的な評価方法と、名義預金が問題となる理由を、実際の裁判例をもとにくわしく解説します。

税理士は複数名義の預貯金をすべて「父の財産」と判断

吉田課長「O税理士はどのように対応したのですか?」

 

O税理士は、これらの定期預貯金を亡乙の相続財産として申告すべきだと判断し、相続税申告書のほとんどを作成しました。これに対し原告(長女)は、亡乙名義以外の定期預貯金については、亡乙から生前に贈与を受けたものであり、相続財産として申告するのは誤りだと反発しました。

 

しかし、相続税の申告期限が迫っていたため、遺産分割協議書や申告書を作り直す時間はありません。

 

そこで原告(長女)は、他の相続人と同様に遺産分割協議書(下記2.(3)③イ.)に署名・押印したうえで、その内容に沿って相続税の申告を行い、同時に「申告内容に誤りがある」として更正の請求をしたのです。

 

吉田課長「遺産分割協議書には、問題の定期預貯金の記載もあるんですよね?」

 

はい。「遺産分割協議書」とは、被相続人の財産を確認し、その財産を誰が相続するかについて、相続人全員が合意したことを示す文書です。

 

本件では、原告が「相続財産ではない」と否認している預貯金(本件申告預貯金。前掲2.(2))についても、遺産分割協議書に記載されていました。したがって、遺産分割協議書に署名・押印しておきながら、更正の請求で是正を求めるというのは、矛盾した行為だと言わざるを得ません。

 

ただし、この裁判では、本件申告預貯金を遺産分割協議書に記載したこと自体は、直接の争点にはなっていません。

 

2.親族名義預貯金の帰属に関する裁判例

(3)問題となった預貯金の事実関係

①昭和55年頃

亡乙は、K農協、L信用金庫において、亡乙、丙(後妻)、丁(長男)、戊(二男)、原告(長女)、丁・戊の子どもなどの名義で、定期預貯金の預け入れ・解約・継続を繰り返していた。

 

②平成21年4月25日(亡乙の死亡時)

相続人全員の名義預金と、原告の子どもを含む「相続人の子ども名義」の預貯金などを合わせた本件申告預貯金等は合計45口存在していた。このうち、原告ら名義の預貯金(本件申告預貯金)は10口、合計828万2,785円であった。

 

③平成22年2月22日

イ.本件遺産分割協議書が作成された。

ロ.本件申告預貯金等は、遺産分割の対象となる相続財産として記載された。

ハ.本件申告預貯金等については、共同相続人がそれぞれ自分の名義の預貯金を取得し、共同相続人の子名義の預貯金については、その親である共同相続人が取得すると記載されていた。

ニ.相続税の申告書にも本件申告預貯金等が相続財産として記載されていた。

 

(4)原告による更正の請求

原告ら名義の本件申告預貯金について、原告は「亡乙が生前に各名義人へ贈与したものであるにもかかわらず、誤って相続財産として申告してしまった」として、亡乙の死亡に係る相続税の更正を求めた(本件更正の請求)。なお、原告以外の共同相続人は更正の請求をしていない。税務署長はこの更正の請求を認めず、争いは裁判に発展した。

 

吉田課長「原告(長女)はなぜこのようなことをしたのでしょうか?」

 

原告には「強い想い」があったのだと思います。その始まりは、昭和55年頃に遡ります(上記2.(3)①)。亡乙はこの頃から、自身が死亡した際の相続税負担を軽くする目的で、妻・子ども・孫などの名義で定期預貯金を作り続けていました。定期預貯金の解約も含め、亡乙が亡くなるまで25年以上にわたり続けられていました。

 

こうした亡乙の行為について、O税理士は「これらの預貯金はすべて亡乙の財産である」と判断しました。原告は、父が自分のために贈与していた“自分の財産”がすべて父自身の財産であると判断され相続税負担が増えることに、反発したのです。

 

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