(※写真はイメージです/PIXTA)

大手決済代行会社・全東信の破綻では、預金残高の水増しや架空債権の計上、営業権の過大計上など、大規模な粉飾決算の疑いが明らかになりつつある。こうした事件が起きるたび、「なぜ見抜けなかったのか」に注目が集まるが、より本質的な問題は、なぜ企業は粉飾に手を染め、一度始めると抜け出せなくなるのかという点にある。粉飾決算が始まる背景や雪だるま式に膨らむ仕組み、金融機関が決算書のどこを見ているのかについて、公認会計士・税理士の貝井英則氏の解説を交えながら読み解く。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

一度始めると抜け出せない理由

粉飾決算の最大の恐ろしさは、一度始めると正常な状態へ戻すことが極めて難しい点にある。

 

たとえば、本来は赤字だったにもかかわらず利益を上乗せして黒字決算を作れば、翌期はその架空の利益を打ち消すだけでも同額以上の利益を稼がなければならない。しかし、そのような急激な業績改善は容易ではない。

 

その結果、翌年も利益を水増しし、さらに翌年も粉飾を続ける。こうして粉飾は雪だるま式に膨らんでいく。

 

貝井氏は、その仕組みを次のように説明する。

 

「粉飾は利益を生み出しているわけではなく、本来計上すべき損失を先送りしているだけです。存在しない1億円の売上を計上すると、その見合いとして1億円の売掛金が貸借対照表に計上されます。しかし、その売掛金は実際には回収されません。金融機関や監査人は売掛金の残高や回転期間も確認しますので、『なぜ回収されないのか』『本当に回収できるのか』という違和感を持つきっかけになります」

 

そして、問題は先送りした損失が消えるわけではないことだ。

 

「その売掛金は最終的には貸倒処理などを行わなければならず、利益はどこかで減少します。つまり、利益を『作った』のではなく、将来の損失を先送りしただけなのです。そのため、翌年も粉飾、さらに翌年も粉飾という悪循環に陥り、雪だるま式に粉飾額が膨らんでいきます」(貝井氏)

 

最初は数千万円だった粉飾が、数十億円、数百億円へと膨らんでいく事件は珍しくない。粉飾は経営改善を先送りするだけでなく、経営者自身が会社の実態を正確に把握できなくなる危険性もはらんでいる。

過去にもあった山一、オリンパス・・・

この構図は、日本の大型粉飾事件にも共通している。

 

1997年に自主廃業した山一證券は、含み損を抱えた有価証券を簿外へ移す「飛ばし」を続けた結果、簿外債務は約2,600億円に膨らみ、負債総額約3兆5,000億円で経営破綻した。

 

また、オリンパス事件では、運用損失を連結対象外のファンドへ移し、M&Aを利用して穴埋めする手法により、約20年間にわたって損失を隠し続けた。

 

規模や手法は異なるものの、「今回だけ乗り切れば」という判断を繰り返した結果、取り返しのつかない事態に陥った点は共通している。全東信でも20年以上にわたり粉飾が続いた可能性が指摘されているが、その背景にも同様の構造があった可能性がある。
 

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