「裁判になれば何とかなる」とは限らない
税務訴訟は、税務行政に対する最終的な司法審査である。しかし、それは決して気軽に利用できる制度ではない。
訴訟には時間も費用もかかる。専門的な法的主張が必要となるだけでなく、証拠資料の収集や立証にも多くの労力を要する。
実際、令和7年度を見ると、審査請求は3,159件あったのに対し、新たに提起された訴訟は202件にとどまっている。多くの案件は行政不服申立ての段階で終結しており、裁判まで進むケースは限られている。
「裁判所なら税務署より納税者寄りの判断をしてくれる」と期待する向きもあるかもしれない。しかし、裁判所は感情や事情ではなく、証拠と法令に基づいて判断する。税務調査の段階で十分な立証ができていなければ、裁判になって新たな主張を行っても、それだけで結論が変わるわけではない。
税務訴訟は、裁判から始まるものではなく、税務調査の時点から既に始まっていると言ってよいだろう。
勝敗を分けるのは「調査段階」での対応
今回公表されたデータは、「争っても意味がない」ということを示しているわけではない。
むしろ、不服申立制度や税務訴訟は、納税者の権利を守るために設けられた重要な救済制度であり、毎年一定数の処分が見直されていることも、その役割を裏付けている。
重要なのは、税務調査の段階から将来の訴訟を見据えて対応することだろう。
調査官とのやり取りを記録し、契約書や請求書、帳簿、電子データなどの証拠を適切に保存すること。税務当局がどのような事実認定や法令解釈に基づいて課税しようとしているのかを把握し、必要に応じて税理士など専門家と連携しながら主張を整理していくことが、その後の結果を左右する。
税務訴訟は、追徴課税を受けてから始まるものではない。税務調査への対応、その一つひとつの積み重ねが、再調査請求、審査請求、さらには税務訴訟における判断にも大きな影響を及ぼす。
令和7年度の統計は、税務当局の判断を覆すことが容易ではない現実を示している。しかし同時に、十分な証拠と法的根拠があれば、処分が見直される余地も残されていることを示している。
税務訴訟で問われるのは、「争うかどうか」ではない。「どのように備えるか」である。その備えは、税務署から最初の連絡を受けた瞬間から始まっているのである。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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