(※写真はイメージです/PIXTA)

フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)の施行から1年半余り。公正取引委員会は2026年6月10日、令和7年度における同法の運用状況を取りまとめ、公表した。それによると、違反被疑事件として新たに着手した案件は1,626件、勧告・指導などの措置が講じられた案件は1,552件に上る。違反行為の類型別件数(延べ2,727件)のうち約8割を占めたのは、「報酬の支払い」と「取引条件の明示」という、契約実務の基本ともいえる項目だった。フリーランスや副業人材の活用が広がるなか、企業と個人事業主との取引ルールは大きな転換点を迎えている。公取委の最新の運用状況から、企業が見直すべき実務を読み解く。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

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施行2年目で見えてきた「フリーランス取引」の実態

フリーランス法は、個人事業主やフリーランスが企業との取引で不利益を受けないよう、取引の適正化と就業環境の整備を目的として2024年11月に施行された。

 

これまで企業間取引については中小受託取引適正化法(取適法)が一定の役割を果たしてきたが、ライターやデザイナー、ITエンジニア、カメラマン、コンサルタントなど、個人で仕事を請け負うフリーランスとの取引については、十分に保護されないケースも少なくなかった。

 

近年は、人材不足を背景に、専門性を持つフリーランスや副業人材を活用する企業が急速に増えている。その一方で、「契約内容が曖昧なまま仕事が始まる」「報酬額が後から変更される」「支払いが予定より大幅に遅れる」といったトラブルも増加していた。

 

今回公表された運用状況は、こうした課題に対応するために制定されたフリーランス法が、実際にどのように運用されているのかを示す「通信簿」といえる。

1年間で1,552件を措置ーー行政は本格的な監視へ

公取委によると、令和7年度に新たに着手した違反被疑事件は1,626件。このうち処理された事件は1,597件で、1,552件について勧告または指導が行われた。

 

内訳は勧告10件、指導1,542件である。勧告件数だけを見ると決して多い数字ではない。しかし、1,500件を超える案件で行政が何らかの措置を講じたことは、制度が「作っただけの法律」ではなく、実際に運用される段階へ入ったことを意味している。

 

また、フリーランス法違反の申出は604件寄せられ、企業側から自発的に違反を申し出たケースも2件あった。全国の相談窓口には4,351件の相談が寄せられ、制度への関心の高さと現場での戸惑いが浮き彫りとなった。なお、令和7年度においては、特定業務委託事業者から特定受託事業者に対し、総額1,734万円の原状回復が行われている。

 

たいさんぼく社会保険労務士・行政書士事務所代表の安部香織氏は、今回の運用実績について次のように評価する。

 

「社労士の視点で見ると、今回の公表は、これまで曖昧なまま処理されてきたフリーランスとの取引に対し、行政が本格的にメスを入れ始めた転換点といえます。単なる一企業への行政措置ではなく、『口約束』『後で条件を決める』といった商慣行そのものが通用しなくなったことを示しています。企業は『法律ができた』ではなく、『実際に運用されている』ことを認識する必要があります」
 

 

次ページ違反の約8割は「支払い」と「契約条件」

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