裁判まで進んでも逆転は容易ではない
行政不服申立てでも解決しない場合、納税者に残された最終的な救済手段が税務訴訟である。裁判所が税務当局の処分の適法性を判断し、違法と認められれば処分は取り消される。
では、実際に裁判まで進んだ場合、税務当局の判断はどの程度覆っているのだろうか。
国税庁が公表した「令和7年度における訴訟の概要」によると、令和7年度に新たに提起された税務訴訟は202件で、前年度の196件からわずかに増加した。
税目別では、所得税が61件と前年度から減少した一方で、法人税は49件、消費税は31件となり、いずれも前年を上回った。企業活動の複雑化や、消費税制度を巡る論点の増加が背景にある可能性も考えられる。
一方、令和7年度に終結した訴訟は201件であった。その内訳を見ると、棄却が169件で全体の84.1%を占める。却下は15件、取下げ等は9件であった。
これに対し、国側が敗訴したのは、全部敗訴が6件、一部敗訴が2件の計8件にとどまる。国側敗訴率は4.0%であり、裁判まで進んだからといって税務当局の判断が容易に覆るわけではないことが分かる。
もちろん、裁判は行政不服申立てとは制度の趣旨も判断基準も異なるため、単純に認容率と勝訴率を比較することはできない。しかし、税務訴訟が進むにつれて、既に形成された事実認定や法令解釈を覆すことが難しくなる傾向は、数字からも読み取ることができる。
データが示す「税務訴訟」の現実
令和7年度の各制度を並べてみると、税務訴訟の実態がより明確になる。
再調査請求では認容率が8.0%、審査請求では7.2%、そして税務訴訟における国側敗訴率は4.0%であった。
もちろん、これらは制度も対象も異なるため、単純に「勝率」として比較することは適切ではない。しかし、いずれの手続きでも税務当局の判断が維持される割合が高いという点は共通している。
その背景には、税務調査の段階で課税要件や証拠関係が詳細に検討された上で処分が行われていることがある。また、不服申立てや訴訟に進む案件は、法令解釈や事実認定について当事者間の対立が大きく、容易に結論が変わらない事案が多いことも影響している。
その一方で、毎年一定数の案件では処分の全部または一部が見直されていることも事実である。
つまり、「税務署の判断は絶対ではない」が、「覆すには十分な根拠が必要」というのが、令和7年度のデータから見えてくる現実である。
