税金に関するニュースでは、「脱税」「租税回避」といった言葉が頻繁に登場します。しかし、これらは似ているようで意味は大きく異なります。特に富裕層や多国籍企業を巡る国際課税では、「違法な脱税」ではなく、「合法的な租税回避」が長年の課題となってきました。世界各国はタックスヘイブン対策やデジタル課税、最低法人税率の導入など、制度整備を急速に進めています。本記事では、『世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】 』の著書がある矢内一好氏が、脱税と租税回避の違いを整理するとともに、国際社会で繰り広げられている「課税の公平」を巡る攻防を見ていきます。
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税金を「払わない」のではなく「減らす」──その境界線とは
新聞やテレビでは「脱税」という言葉がよく使われます。しかし、税務の世界では「脱税」「申告漏れ」「租税回避」は、それぞれ異なる意味を持っています。
まず「脱税」とは、所得や財産を意図的に隠したり、架空の経費を計上したりするなど、税法に違反して税金を免れる行為です。悪質な場合には重加算税が課されるだけでなく、刑事罰の対象となることもあります。
一方、「申告漏れ」は、計算ミスや税法の解釈違いなどにより、本来申告すべき所得や財産が正しく申告されていなかった状態を指します。追加で税金を納めることになりますが、故意ではない場合には脱税とは区別されます。
そして、この二つとは異なる概念が「租税回避」です。
租税回避とは、法律の範囲内で取引方法や会社の組織形態を工夫し、税負担をできるだけ軽くする行為をいいます。違法ではないものの、本来想定されていない制度の隙間を利用して税負担を著しく軽減するケースもあり、近年では各国の税務当局が最も注目する分野の一つとなっています。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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