(※写真はイメージです/PIXTA)

暑い日が続くこの季節、仕事帰りや休日に冷えたビールを楽しむ人も多いでしょう。しかし、その一杯には、私たちが普段あまり意識することのない「税金」の仕組みが隠されています。350ミリリットル缶ビール1本には約54円の酒税が含まれる一方、人気が高まるノンアルコール飲料には酒税はかかりません。さらに、ビールとノンアルでは消費税の扱いも異なります。身近な飲み物を題材に、酒税の仕組みや税率の変遷、そしてノンアル人気が税収に与える影響について考えてみたいと思います。

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新幹線からビールが消えた

暑い季節になりました。東海道新幹線では、一部の列車を除き車内販売が終了しました。出張帰りの夕方、座席に座ってビールを買うこともできなくなり、東京駅から朝の列車でコーヒーを楽しむ機会も少なくなりました。

 

ビールは日本の酒税を支える代表的な酒類です。酒税法第2条では、「酒類」とはアルコール分1度以上の飲料と定義されています。

 

近年は、コロナ禍の影響や若年層のアルコール離れを背景に、ノンアルコール飲料のシェアが拡大しています。いわゆるノンアルコールビールテイスト飲料は、アルコール分1度未満であるため酒税法上の「酒類」には該当せず、酒税は課されません。

 

ノンアル市場がさらに拡大すれば、酒税収入にも少なからず影響を及ぼす可能性があります。酒税は長年、国の重要な税収の一つとして位置付けられてきましたが、飲酒スタイルの変化とともに、その在り方も変わりつつあります。

ビールの税率はどう変わったのか

ビールを巡る税金は、これまで何度も制度改正が行われてきました。その象徴的な出来事が、サッポロビールの「極ZERO(ゴクゼロ)」を巡る訴訟です。

 

サッポロビールは、「極ZERO」が第三のビールには当たらないとして、納付した酒税約115億円の返還を求めました。しかし、令和2(2020)年12月15日、最高裁判所はサッポロ側の上告を受理しない決定を行い、返還請求は認められませんでした。

 

その後、酒税制度は大きく見直されました。令和2(2020)年10月からビールの酒税は段階的に引き下げられ、発泡酒や第三のビールは段階的に引き上げられています。

 

そして、令和8(2026)年10月からは、ビール、発泡酒、第三のビールの税率は、いずれも1キロリットル当たり15万5,000円に一本化されました。

 

現在、350ミリリットル缶ビール1本当たりの酒税は約54.25円です。販売価格のおおむね4分の1が酒税に相当します。

 

一方、ノンアルコール飲料には酒税が課されないため、100円台前半で販売されている商品も少なくありません。消費者にとって価格差を感じる理由の一つが、この酒税の有無にあります。

ノンアルは「酒」ではない

ビールには酒税が課されるだけでなく、消費税率は10%です。

 

一方、ノンアルコールビールテイスト飲料は酒類ではなく飲料として扱われるため、軽減税率の対象となり、消費税率は8%となっています。

 

現在、消費税率の見直しについてさまざまな議論が行われています。仮に軽減税率が引き下げられることになれば、ノンアルコール飲料の税負担は軽くなりますが、ビールは軽減税率の対象外であるため、その影響は受けません。

 

普段は「ノンアルコールビール」と呼ばれていますが、法律上は「酒類」ではありません。そのため、税制上は缶コーヒーやお茶などの清涼飲料水と同じ扱いになります。

 

暑い夏には、ビールを選ぶ人もいれば、ノンアルコール飲料を選ぶ人もいます。どちらも喉を潤す一杯ですが、税金の仕組みは大きく異なります。

 

何気なく手に取る一本にも、酒税や消費税といった税制の考え方が反映されています。今年の夏は、冷えた一杯を味わいながら、その背景にある税金の仕組みにも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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