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明治から課税されていた「たばこ」
以前の映画やテレビドラマを見ると、喫煙シーンの多さに気づきます。交通機関をはじめ公共の場での喫煙が厳しく制限されている今日では、こうした時代を舞台にした作品をリメークすると、出演者が喫煙する場面も多くなります。しかし、実際には喫煙習慣のない俳優も少なくないためか、火をつけて一口吸ったまま演技を続けている場面を目にすることがあります。
日本に所得税が導入されたのは明治20年です。それ以前の税制では、地租と酒税が主要な税目でした。酒税と並び、たばこにも明治9年から課税されていました。
しかし、明治37年にはたばこは国の専売制度へ移行し、昭和60年に日本専売公社が民営化されるまで、日本専売公社が専売納付金として国に納める仕組みとなっていました。そのため、酒税と同じように古くからある税金という印象がありますが、現在の「たばこ税法」が制定されたのは昭和59年8月10日公布の法律第72号です。
つまり、たばこへの課税の歴史は150年近くありますが、「たばこ税」という税法そのものは比較的新しい法律なのです。
専売制度の廃止で誕生した税法
なぜ新しい税法が必要になったのでしょうか。
その理由は、専売制度の廃止にあります。国が製造・販売を独占していた時代は、日本専売公社が専売納付金を国へ納めていたため、現在のようなたばこ税法は必要ありませんでした。しかし、昭和60年に日本専売公社が民営化され、日本たばこ産業(JT)が発足すると、それまでの専売納付金に代わる税制が必要となり、現在のたばこ税法が整備されたのです。
たばこには5種類の税金が課されている
現在、たばこには5種類の税金が課されています。国税である「たばこ税」「たばこ特別税」、地方税である「都道府県たばこ税」「市町村たばこ税」、そして消費税です。
令和5年度の税収では、国のたばこ税は1兆752億円で国税収入全体の1.4%、酒税は1兆1814億円で1.5%を占めています。また、地方たばこ税の税収は1兆714億円で、その内訳は都道府県分が1504億円、市町村分が9210億円となっています。
喫煙者は減少しているものの、たばこ税は依然として国・地方を通じた重要な財源となっています。
増税への反対が比較的少ない理由
一般に、国が増税を行うと国民の反発を招きます。かつて、ある首相が給与所得者への増税方針を示した際には、「増税メガネ」という揶揄する呼び方まで広まりました。
一方、たばこ税については事情が異なります。受動喫煙対策や「嫌煙権」への関心の高まりもあり、たばこ税の増税に対する反対の声は比較的少ない傾向があります。そのため、財源確保や健康政策の観点から、たばこ税はたびたび引き上げられてきました。
JTは海外市場で成長を続ける
現在、日本専売公社の事業を引き継いでいるのは、JTです。
日本国内では喫煙率が年々低下していますが、海外には依然として喫煙率の高い国も少なくありません。世界全体で見れば、たばこ産業はなお収益性の高い事業です。JTも国内市場だけでなく海外市場に活路を見いだし、海外のたばこ会社を買収するなどして事業を拡大しています。
「たばこ税」は昔からある税金というイメージがありますが、実際には専売制度から税制への転換によって生まれた比較的新しい税法です。その成立の背景を知ることで、日本の税制が社会や経済の変化に合わせて姿を変えてきたことがよく分かります。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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