税金に関するニュースでは、「脱税」「租税回避」といった言葉が頻繁に登場します。しかし、これらは似ているようで意味は大きく異なります。特に富裕層や多国籍企業を巡る国際課税では、「違法な脱税」ではなく、「合法的な租税回避」が長年の課題となってきました。世界各国はタックスヘイブン対策やデジタル課税、最低法人税率の導入など、制度整備を急速に進めています。本記事では、『世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】 』の著書がある矢内一好氏が、脱税と租税回避の違いを整理するとともに、国際社会で繰り広げられている「課税の公平」を巡る攻防を見ていきます。
相続税のない国へ移住すれば相続税はゼロになるのか
富裕層による租税回避は、法人だけの話ではありません。
相続税のない国へ移住し、日本の相続税を回避しようと考えるケースもあります。香港、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどは相続税を課していないため、一時は富裕層の移住先として注目されました。
しかし、日本では相続税制度が見直され、一定の条件では海外へ移住しても日本の相続税が課税される仕組みが整備されています。そのため、単純に海外へ住民票を移せば相続税を免れられるという時代ではなくなりました。
巨大IT企業はなぜ税金を巡って批判されたのか
租税回避の問題は、多国籍企業にも及びます。GAFA(Google、Apple、Facebook〈現Meta〉、Amazon)などの巨大IT企業は、世界各国で莫大な利益を上げながら、国際税制の仕組みを利用して税負担を抑えているとの批判を受けてきました。
たとえばAmazonは、かつて日本国内で多額の売上を上げながら、日本には法人税の課税対象となる恒久的施設(PE)が存在しないという国際税制を利用し、日本で十分な法人税を納めていないと指摘されていました。
また、スターバックスはスイスやオランダのグループ会社との取引を利用して利益を移転し、税負担を軽減していたことが問題視されました。欧州連合(EU)は、一部加盟国との税務上の優遇措置について「国家補助」に当たる可能性があるとして是正を求めています。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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