食料消費税1%で地方財政はどうなる?1.6兆円の減収を誰が支えるのか

食料消費税1%で地方財政はどうなる?1.6兆円の減収を誰が支えるのか
(※写真はイメージです/PIXTA)

食料品の消費税を1%に引き下げる――。社会保障国民会議の実務者会議が示した中間とりまとめ案は、家計負担の軽減を目指す一方で、新たな課題も浮き彫りにしています。地方消費税や地方交付税の減収額は年間約1.6兆円に上るとされますが、その財源をどのように手当てするのかは、現時点では明らかになっていません。税収基盤の弱い地方自治体ほど影響は大きいと考えられ、2年間の時限措置終了後には、給付付き税額控除との関係も新たな論点となりそうです。

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食料消費税1%案が浮上

消費税は、平成元年4月に税率3%で導入されて以降、段階的に引き上げられてきました。

 

・平成元年4月1日 3%(創設時)

・平成9年4月1日 5%(国4%、地方1%)

・平成26年4月1日 8%(国6.3%、地方1.7%)

・令和元年10月1日 標準税率10%(国7.8%、地方2.2%)、軽減税率8%(国6.24%、地方1.76%)

 

令和8年2月以降、食料消費税ゼロを公約に掲げた高市早苗首相の意向を受け、社会保障国民会議では、国会議員による実務者会議と外部有識者会議による議論が進められてきました。

 

6月25日に公表された実務者会議の中間とりまとめ案では、食料品の消費税率を令和9年4月から1%へ引き下げる案が示されました。

 

当初の「ゼロ税率」ではなく1%とした背景には、レジシステムなどの改修期間を短縮する狙いがあります。ゼロ税率の導入は事業者側のシステム対応に大きな負担を伴うため、1%にとどめることで、円滑な制度移行を目指す考えです。

 

しかし、消費税減税の恩恵が期待される一方で、地方財政への影響をどのように補うのかという課題は、依然として残されています。

年間1.6兆円の減収インパクト

6月22日の衆議院予算委員会で、林芳正総務相は、消費税減税による地方税収への影響について説明しています。

 

それによると、地方消費税収の減少が約1兆円、地方交付税分の減少が約0.7兆円となり、合計すると四捨五入して年間約1.6兆円の減収となる見込みです。地方交付税は消費税収の19.5%を財源としているため、消費税率の引き下げは地方自治体の財政基盤に直接影響します。

 

仮に2年間の時限措置であっても、地方全体では約3.2兆円規模の財源不足が生じる計算になります。

 

6月26日に開催された社会保障国民会議では、地方自治体に対して「財政運営に支障が生じないよう適切に対応する」との方針が示されました。しかし、具体的な財源措置や補填方法については明らかになっていません。

 

減税政策が国民生活を支える一方で、そのコストを誰が負担するのかという議論は、今後避けて通れないテーマになるでしょう。

世田谷区より小さい県予算も

地方財政への影響を考えるうえで、自治体間の財政力格差は重要な視点となります。

 

東京都の令和7年度一般会計当初予算は9兆1,580億円に達し、そのうち都税収入は6兆9,296億円と、全体の75.7%を占めています。令和6年度の世田谷区の一般会計歳入決算額は5,270億円です。

 

これに対し、令和4年度ベースでは、鳥取県の歳入総額は4,057億円、高知県は4,966億円、香川県は5,155億円となっており、いずれも世田谷区の財政規模を下回っています。さらに、税収比率は鳥取県、高知県がいずれも18.1%、香川県でも28.4%にとどまっています。

 

税収基盤の弱い自治体ほど、地方交付税や地方消費税に依存する割合が高くなります。そのため、消費税減税による影響は、地域によって大きく異なる可能性があります。

 

全国一律の減税政策が、地方間格差という新たな問題を浮き彫りにする可能性もあるでしょう。

統一地方選挙を前に残された課題

実務者会議の中間とりまとめでは、減税の実施時期や制度設計については言及されているものの、財源確保策についての具体的な方向性は示されていません。

 

来年には統一地方選挙が控えています。地方自治体にとって、消費税減税による税収減少への対応は、極めて重要な政治課題となるでしょう。

 

特に、財政規模が小さい自治体では、地方消費税収の減少が行政サービスに与える影響も無視できません。

 

国がどのような財源措置を講じるのか、あるいは新たな地方支援策を設けるのか。今後の議論の行方が注目されます。

2年後の「8%復帰」は実現するのか

今回の食料消費税1%案は、2年間の時限措置とされており、その後は8%へ戻すことが想定されています。

 

もっとも、一度引き下げた税率を再び引き上げることについては、国民的な反発が生じる可能性も指摘されています。

 

また令和11年には給付付き税額控除制度の導入が予定されています。食料消費税の軽減は、所得に関係なく、すべての国民が恩恵を受けられる制度です。しかし、給付付き税額控除は、所得水準や子育て状況などによって適用対象が限定される見込みです。

 

食料消費税の減税では恩恵を受けていたものの、給付付き税額控除では税額控除や給付を受けられない層が生じる可能性があります。

 

したがって、「1%から8%への復帰」に反対する議論を行うのであれば、給付付き税額控除による再分配のあり方をどのように評価するのかについても、あわせて論じる必要があるでしょう。

 

消費税減税は、単なる税率の問題ではありません。地方財政、社会保障、所得再分配という複数の政策課題が複雑に絡み合うテーマであり、その全体像を踏まえた議論が求められています。

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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