違反の約8割は「支払い」と「契約条件」
違反行為の類型別に見ると、最も多かったのは「期日における報酬支払義務違反」で1,135件(41.6%)だった。次いで「取引条件の明示義務違反」が1,126件(41.3%)となり、この2項目だけで全体の約8割を占めている。さらに、「買いたたき」が250件(9.2%)で続いた。
一見すると難しい法律違反のようにも思えるが、実際には「契約内容を書面やメールで明示していない」「支払期日を明確に決めていない」といった、日常的な契約実務が原因となっているケースが少なくない。
安部氏は、「中小企業で最も見落としやすいのは、『長年付き合いがあるから契約書は不要』『まず仕事を始めてもらい、条件は後で相談する』という考え方です。こうした従来の柔軟な運用が、そのまま法令違反につながる可能性があります」と指摘する。
さらに、「中小受託取引適正化法(取適法)を守っているから問題ないという思い込みも危険です。フリーランス法は資本金ではなく、取引相手がフリーランスかどうかで適用されます。これまで取適法の対象外だった取引にも、新たな義務が課されるケースがあります」と注意を促す。
違反が集中したのは情報通信業と専門サービス業
措置件数を業種別に見ると、情報通信業が575件(37.0%)で最も多かった。続いて、学術研究・専門・技術サービス業が326件(21.0%)、運輸業・郵便業が135件(8.7%)となっている。
いずれもフリーランスへの業務委託が多い業種である。IT開発やシステム構築、デザイン制作、コンテンツ制作、コンサルティングなどでは、専門人材を外部委託するケースが一般化している。一方で、急速な人材活用に契約実務が追いついていない企業も少なくない。
公取委は、問題事例の多い業種を対象に約3万事業者への調査を実施したほか、放送業・広告業に対して集中的な調査を行い、128事業者に是正を求める指導を行っている。
制度は、違反があった企業だけを取り締まる段階から、問題が起こりやすい業界全体の取引慣行を改善する段階へと進みつつある。
