転がり込んできた遺産――夢が現実になった会社員
「これで嫌な仕事をしなくていい。自由に生きていいんだ」
60歳の定年退職の日、佐山和俊さん(仮名)は、長年勤めた東京の小さな雑居ビルを見上げながら、こみ上げる万感の思いに浸っていました。
「自分の会社員人生は、本当に底辺だったんですよ」
大学4年生のとき就職戦争に負け、ようやく入社したのは小さな印刷会社でした。しかし、営業成績はいつも下位争い。その後、営業サポートの事務職に異動となり、50代後半になっても年収は400万円ほど。退職金制度がない会社で、60歳時点での貯金は350万円程度に留まっていました。
「独り身だし、死ぬまで働くしかないのか」……そう諦めかけていた矢先、人生を一変させる出来事が起こります。若い頃に大喧嘩をして以来、20年以上も絶縁状態だった父親が他界したのです。
母親はすでに亡くなっており、一人っ子の田中さん。父親にどんな資産があるかも知りませんでしたが、弁護士から支払われた相続財産は、税金や諸経費を引いても「約6,200万円」に上りました。
カツカツの生活を送ってきた田中さんにとって、それは異次元の金額でした。
「大嫌いな人でしたが、人生で初めて親父に『ありがとう』と思いました。これだけあればお金の心配はないので、辛い仕事はさっさと辞めようと思ったんです」
田中さんは65歳まで働くという選択肢を捨て、迷うことなく定年退職を選びました。
