(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、買い物や通院、家の手続きなど、日常の小さな困りごとが増えていきます。近くに子どもがいれば、つい頼りたくなるのは自然なことです。しかし子どもにも仕事や家庭があり、親の不安をすべて受け止められるわけではありません。親子だからこそ遠慮が薄れ、気づかないうちに負担をかけてしまうこともあります。

「少し距離を置きたい」…親子関係を守るための線引き

親子関係に大きな溝が生まれるきっかけになったのは、幸子さんが夜遅くに娘へ電話をかけたことでした。

 

テレビで高齢者の孤独死に関する特集を見て、不安になったのです。恵理さんは仕事を終え、子どもの宿題を見ている最中でした。

 

「何かあったの?」

 

「別に何かあったわけじゃないけど、急に心配になって」

 

その後も、幸子さんは同じような電話を何度かかけました。数日後、恵理さんからメッセージが届きました。

 

「しばらく、少し距離を置きたい」

 

幸子さんは画面を見つめたまま固まりました。

 

「親子だから、多少頼っても大丈夫だと思って……」

 

そうつぶやく妻に、正弘さんも言葉を返せませんでした。

 

後日、恵理さんは夫婦に正直な気持ちを話しました。

 

「嫌いになったわけじゃない。でも毎週のように呼ばれて、夜にも電話が来て、私の生活が回らなくなっていたの」

 

恵理さんには仕事があり、子育てもありました。親のことを心配していないわけではありません。ただ、買い物、通院、愚痴の聞き役、緊急時の不安まで、すべてを受け止める余裕はなかったのです。

 

夫婦は恵理さんとも話し合い、頼みごとのルールを決めました。急ぎでない用事はまとめて相談する。夜の電話は本当に必要なときだけにする。買い物は宅配や配達サービスも使う。病院の付き添いは、毎回ではなく必要なときに事前に頼む。

 

「距離を置かれた」と感じた出来事は、正弘さん夫婦にとってつらいものでした。しかし、それは親子関係が終わる合図ではありませんでした。むしろこれ以上こじれないために、娘が出した精いっぱいのサインだったのかもしれません。

 

親子であっても、できることには限りがあります。大切なのは頼らないことではなく、頼り方を見直すことです。

 

制度や地域の支援を組み合わせながら、親も子も無理なく続けられる距離を探すことが、関係を守るために必要なのかもしれません。

 

 

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