「90日ルール」があっても、実家を売っていたら戻る場所はない
長年住んだ我が家を失い、見知らぬ場所で暮らす。自分に置き換えてみてもわかることですが、そのストレスは決して小さなものではありません。
礼子さんのように「施設が合わなかった」というケースは少なくありませんが、そうしたときのために「90日ルール」という仕組みがあります。90日ルール(短期解約特例)とは、老人ホームに入居後、90日以内に退去・死亡した場合、支払った入居一時金の大部分が返還されるもの。老人福祉法で定められています。
通常、入居時に数百万〜一千万円ほど差し引かれる「初期償却(お礼金のようなもの)」が全額免除され、実際に入居した日数分の家賃や管理費、食事代などの実費だけが日割りで差し引かれ、残りの大金が戻ってきます。
ただ、90日ルールがあっても、帰る家がないのであれば意味を成さないのです。
価格の高さや設備の豪華さ=「親の幸せ」ではない
亮介さんの「最高の環境を用意してあげたい」という気持ちは、母への思いやりに他なりません。しかし、価格の高さや設備の豪華さが、必ずしも親の幸せに直結するとは限らないのが、老後の住まい選びの難しさです。
もちろん、礼子さんのケースでは、半年~1年後に状況が変わっている可能性もあります。そもそも“場”に慣れるのには、多少の時間がかかるもの。入居者の中で気の合う人が見つかったり、楽しみを見つけたり……。亮介さんの言ったように「慣れるまで待つ」ことは、老人ホーム入居において、誰にでも必要になるステップでしょう。
ただ、もし時間を戻せるとしたら、一気に進めず体験入居を徹底的に活用すべきでしょう。可能であれば、手元の預貯金などで先に数ヵ月分の月額費用を支払い、実家を残した状態で一度暮らしてみる。「ここなら大丈夫」と本人が確信してから、初めて実家を売却する方が間違いありません。
慎重すぎるほどのステップを踏むことが、親子ともに後悔しない終の棲家選びの大切な鍵となるはずです。
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