「昔は余裕があったのに」…収入減を直視できなかった夫婦
東京都内に住む正一さん(仮名・84歳)と妻の光子さん(仮名・81歳)は、かつて小さな飲食店を営んでいました。
店は地元で知られ、正一さんが60代のころまでは、夫婦の暮らしにも余裕がありました。旅行へ行き、孫に小遣いを渡し、外食も楽しむ。親族の間でも「2人は困っていない」と見られていたといいます。
しかし、店は70代半ばで閉じました。その後は年金と、わずかな雑収入で暮らすようになります。持ち家はすでに売却しており、現在は月12万円の賃貸マンション住まいです。
「店をやめても、何とかなると思っていました」
正一さんはそう振り返ります。ところが、現実は違いました。
年金は夫婦合わせて月18万円ほど。そこから家賃12万円を払えば、残るのは6万円ほどです。光熱費、食費、医療費、通信費を考えると、生活はすぐに苦しくなりました。
それでも夫婦は、かつての暮らしの感覚をなかなか手放せませんでした。
「昔はこれくらい普通だった」
「来月には何とかなる」
そう言いながら、貯金を少しずつ取り崩していきました。
確定申告の時期になり、税理士に資料を見てもらったとき、正一さんは初めて厳しい現実を数字で突きつけられます。前年の収入は大きく減り、事業時代のような余裕はもうありませんでした。
「生活が苦しいんです」
正一さんは、ようやくそう口にしました。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得が月22万1,544円である一方、消費支出は月26万3,979円となっており、平均では毎月赤字です。夫婦の場合、家賃負担が重いため、平均以上に家計は圧迫されていました。
