(※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代は仕事に追われ、家のことは配偶者に任せきりだったという人もいるでしょう。しかし、定年退職によって在宅時間が増えれば、それまでの家事分担がそのままでいいとは限りません。仕事から離れたことをきっかけに、料理や洗濯、掃除などを一から覚える人もいます。

退職翌日、妻から渡された「家事の担当表」

「会社では部長。でも家では新人です」

 

そう苦笑するのは、60歳で定年退職した佐々木浩一さんです。

 

大学卒業後から同じ会社に勤め続け、最後の8年間は営業部長。部下約30人をまとめ、取引先との調整や予算管理にも追われる毎日でした。

 

妻の由美子さん(58歳)は長年パート勤務を続けながら、食事の支度、洗濯、掃除、買い物など家事の大半を担ってきました。

 

浩一さんは定年後、再雇用を選びませんでした。

 

「しばらくゆっくりしたかったんです。40年近く働いたんだから、半年くらい何もしなくてもいいだろうと思っていました」

 

ところが、退職翌日の朝。朝食を終え、浩一さんがソファでテレビをつけると、由美子さんがA4の紙を1枚差し出しました。

 

「今日から時間あるよね。まず、これお願いします」

 

紙には「風呂掃除」「洗濯物を取り込む」「夕食後の食器洗い」と書かれていました。浩一さんは思わず聞き返しました。

 

「俺が全部やるの?」

 

「全部じゃないよ。これでも一部だから」

 

その日、最初につまずいたのが洗濯でした。洗剤をどこまで入れるのか分からず、柔軟剤の投入口も見つけられません。昼には冷蔵庫を開けたものの、何を作ればいいか分からず、結局カップ麺で済ませました。

 

「会社では部下に『段取りが大事だ』なんて言っていたのに、家では何から手をつければいいのか分からない。妻に笑われました」

 

由美子さんは言います。

 

「定年したら少しは家のことをやってくれると思っていました。でも本人は『しばらく何もしないでゆっくりしたい』と言っていたので、このままだと私が三食用意して、家事も全部続けることになる。それは困ると思って、最初から分担を決めることにしました」

 

総務省『令和3年社会生活基本調査』では、男女の生活時間には依然として差がみられ、家事関連時間は女性のほうが長い傾向にあります。長年の役割分担が続いてきた家庭では、退職をきっかけに家庭内の時間配分を見直す必要が生じることもあります。

 

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