(※写真はイメージです/PIXTA)

物価や家賃の高い都市部を離れ、自然豊かな地方でゆっくり暮らしたい――。そう考える人は少なくありません。近年はSNSなどでも“理想の田舎暮らし”が取り上げられ、移住への憧れを抱く高齢者も増えています。しかし実際には、住まいだけでなく、人間関係や生活環境まで含めて考えなければ、想像とのギャップに苦しむこともあります。

「老後は自然の中で暮らしたい」…68歳父が決めた地方移住

隆司さん(仮名・68歳)は、会社を定年退職した翌年、地方への移住を決めました。

 

年金は月18万円ほど。退職金を含めた金融資産は約1,200万円。妻には先立たれており、娘の麻衣さん(仮名・41歳)は都内で家庭を持って暮らしていました。

 

「老後くらい、静かな場所でのんびりしたい」

 

隆司さんは以前からそう話していました。きっかけは、旅行先で訪れた地方都市でした。

 

海が近く、空気が静かで、住宅価格も都市部より大幅に安い。中古の平屋住宅を比較的安く購入できることも、背中を押しました。

 

「都会は疲れたんだよ」

 

そう言って、隆司さんは築古の小さな平屋を購入しました。最初の数週間は、理想通りでした。

 

朝は近所を散歩し、畑で野菜を育て、夕方にはテレビを見ながら晩酌をする。都会の騒音もなく、時間がゆっくり流れているように感じたといいます。

 

麻衣さんも、父の決断を応援していました。

 

「父はずっと働きづめだったので、ようやく自由になれたのかなと思いました」

 

国土交通省『住宅市場動向調査』でも、住み替えの理由として「住環境」や「自然環境」を重視する人は少なくありません。特に高齢期には、広さや価格だけでなく、生活の静けさや落ち着きを求める傾向もみられます。

 

しかし、移住から数ヵ月が経つと、隆司さんの生活には少しずつ変化が出始めました。

 

まず困ったのは、移動でした。

 

最寄りのスーパーまでは車で20分。病院も近くにはありません。地方では車移動が前提となる地域も多く、都会のように徒歩や電車だけで生活することは難しかったのです。

 

さらに、人との関わりも想像以上に少なくなっていきました。

 

近所付き合いはあるものの、深い交流にはなりません。以前は会社で毎日誰かと話していた隆司さんも、移住後は一日中ほとんど誰とも会話をしない日が増えていきました。

 

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