「もう80歳になるのに、まだ子育て」…母の苦悩
「もうすぐ80歳なのに、いつまで“お母さん”をやらなきゃいけないの……」
神奈川県内に暮らす主婦・久美子さん(仮名・79歳)は、そう肩を落とします。
朝6時半。久美子さんは、82歳の夫と、51歳の一人息子・誠さんの朝食づくりを始めます。それに加えて洗濯、掃除。体力の衰えを感じるなか、家事を今もほぼ一人でこなしています。
「最近は本当に疲れやすくて。寝ても疲れが抜けないんです。でも、私がやらなかったら家がめちゃくちゃになっちゃうから」
夫は昔から家事に無関心で、「男は仕事、女は家事」というタイプ。ただ、その夫の世話だけであれば、これほどの疲労はありません。久美子さんを悩ませているのは、50代にして実家で暮らし続ける、誠さんの存在でした。
「一人息子だから」と甘やかしてしまった後悔
大学卒業後は正社員として働いていた時期もありましたが、人間関係がうまくいかず退職。その後は転職を繰り返し、現在はアルバイトと短時間勤務を掛け持ちしながら生活しています。
「一人息子だったので、かわいくてね。あの子の時代は、就職もすごく大変だったから。……つい甘やかしてしまったところはあると思います」
実家にいれば食事は出てくる。洗濯もされている。困ったことがあれば母親が何とかしてくれる――。そんな生活が何十年も続き、誠さんは50代になった今も、実家を離れる気配がありません。
「前に『一人暮らしとか考えないの?』って聞いたことがあるんです。でも『なんで? 出る気なんてないよ』と言われて終わりでした」
近所からは、「息子さんがいてくれて安心ね」「いざとなったら面倒見てもらえるじゃない」と言われることもあるそう。しかし、久美子さんは苦笑します。
「今だって、面倒を見ているのは親のほうなのに。私たちが死んだら、この子はどうなるのか。それを考えると、眠れなくなります」
久美子さん夫婦の収入は、2人合わせて月19万円ほどの年金だけ。決して余裕のある暮らしではありません。物価も上がり、食費や光熱費の負担が重くなってきたといいます。
「息子は月3万円入れてくれています。ゼロよりはありがたいけれど、これじゃ足りないですよ」
自分たちを頼って生きている誠さんへの不安は尽きません。残せるほどの貯金はほとんどない。兄弟はおらず、頼れる親族もほとんどいません。

