景気回復宣言は水準ではなく方向
世の中の人は、景気が良いか悪いか、という水準を重視しますが、景気のプロたちは方向を重視しますので、注意が必要です。
政府が「景気回復宣言」を出すことがありますが、それを聞いた中小企業の社長が激怒したのを見たことがあります。「政府は何もわかってない。景気は少しも良くないし、俺の会社は大赤字だ」と言うのです。中小企業の社長にとっては景気の水準が低いことが問題なのでしょうが、政府は「景気の方向が下向きから上向きに変わった」ということを宣言しただけなのです。「景気の方向が上向きになったから、しばらくすれば景気は良くなり、中小企業も黒字になるでしょう」と言っているだけなのです。なんといっても、景気の方向が変わった宣言が出るのは、景気が一番悪かった日の翌日(実際にはもう少し後)なのですから。
景気循環は高齢化で縮小
景気については、景気の波が高齢化で小さくなっているという認識も重要です。高齢者の収入は年金中心なので、高齢者の消費は景気と無関係です。ということは、高齢者向けの仕事をしている若者の収入も消費も景気と無関係だということです。極端な話、若者が全員で高齢者の介護をしている国では景気変動はほとんど無いでしょう。それに少しずつ近づいているわけですね。
筆者は引退する年齢ですので「景気予想屋」の仕事が減っても悲しくありませんが、後輩たちが可哀想だ、と思います。仕方のないことですが。
「在庫循環」等が、近年の景気変動要因ではなくなった理由
昔は製造業が経済の中心でしたし、在庫管理技術も稚拙でしたから、「在庫が増えすぎると企業が生産を減らし、それで景気が悪化する」といったことも多かったのでしょうが、最近は経済の中心がサービス業ですし、在庫管理技術も進歩しているので、在庫が景気を動かすケースは減っています。もっとも、在庫の動きと景気の動きには一定の関係がありますから、在庫の動きを見ていると景気の先行きが予想しやすい、といったことは今でもあります。
設備投資循環についても、各社が一斉に更新投資を行っていた時代ではなくなり、買い替えが頻繁なコンピューター関連の設備投資が増えてきたことなどから、最近では景気を動かすほどの力は持っていないようです。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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