潜在成長率低下の主因は「キャッチアップ」
潜在成長率が低下した理由は多数あります。すぐに思いつくのは少子高齢化でしょう。現役世代の人数が増えていた高度成長期と減っている現在とでは、潜在成長率が下がるのが自然ですから。もっとも、それより重要な理由が他にあるのです。
最大の要因は、「キャッチアップ」です。高度成長期は新しい発明・発見がなくても、「米国で使われている技術を日本でも使う」だけで国内で使われている技術は急速に進歩しました。しかし、日本で使われている技術が米国と同じレベルになると(キャッチアップすると)、「新しい発明・発見がない限り技術が進歩しない」ことになるのです。日本のすべての農家がトラクターを持っている状態では、それを最新式のトラクターに買い替えたところで、労働生産性はそれほど急には上がりませんから。
もう1つ、経済のサービス化の影響もあるでしょう。若者が洋服や自動車を買っていた時代には、洋服工場や自動車工場の機械化によって労働生産性が大きく向上していました。しかし、若者が洋服より美容院のサービスを欲するようになり、高齢者が介護や医療のサービスを受けるようになると、美容院や老人ホーム等は機械化が容易ではないため、労働生産性がなかなか上がりません。労働者の数が増えない一方で労働生産性が上がらないので、経済成長率が低くても失業者が増えないのです。
経済政策には「発想の転換」が必要かも…
バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済は需要不足でした。そこで、需要を増やす政策が求められていたのです。しかし、今は労働力希少の時代ですから、需要を増やすことは重要ではありません。それより、労働生産性を上げることが重要です。飲食店が労働力希少なら、自動食器洗い機の導入を促すべきでしょう。そのために補助金を支払うような政策が求められているのです。
減税や給付金等は、消費者の懐を温かくする効果(政治家の人気を高める効果)がある一方で、需要を増やし、インフレを加速しかねません。バブル崩壊後の長期低迷期ならば「需要が増えて失業が減って望ましい」と筆者も賛成していたのでしょうが、今は賛成しにくい状況です。時代が変わった、ということを認識する必要があるように思います。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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