AI革命と第一次トランプ政権の経済政策
また財政の果たした役割も大きい。[図表9]は米国の失業率と財政赤字の推移を示したものだが、財政の役割が劇的に変わったことが明瞭である。
第一次トランプ政権において、トランプ減税が導入された2017年までは、両者は完全に一致していた。つまり財政赤字は完全雇用を実現する手段として考えられており、完全雇用の実現とともに財政赤字はなくなることが常であった。
しかし2017年以降、完全雇用が実現した後でも、米国の財政赤字は対GDP比で3~5%と高水準で推移している。財政の役割が、かつての「完全雇用実現の手段」から「需要超過気味の高圧経済を維持すること」へとシフトしているのだ。
とはいえ、AI革命のスケールは過去の技術革新のレベルを超えており、生産性の向上がもたらす利潤の拡大による潜在的貯蓄過剰と労働余剰は、著しく大きいと推測される。供給力超過からデフレに陥る潜在的リスクは大きい。株価上昇を通した購買力の向上と、財政政策の役割はさらに大きくなっていくと考えられる。
したがって、AIによる新産業革命を規制緩和、既得権排除で推進しつつ、一方で減税による需要創造を推し進めるトランプ政権の経済政策は、おおむね妥当と考えられる。これに対置した民主党のハリス候補の政策は、「自社株買いに4%の増税を課し、法人税率を引き上げることによる企業増税と弱者救済」という社会主義色の強いものであり、資本主義の危機への対応としては問題の多いものであった。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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