(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカはいま、かつてない構造的な危機に直面していると言っていいだろう。中間層の没落、拡大する格差、そして社会の分断——「希望の国」と呼ばれた姿は大きく揺らいでいる。こうした現実を誰よりも早く直視し、強硬な処方箋を提示したのがドナルド・トランプであった。再び政権を握ることとなり、アメリカは、従来の価値観や政策運営の枠組みを大きく転換する局面に入ったといえるだろう。本記事では、武者陵司氏の著書『トランプの資本主義革命』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集し、その背景にある米国経済の現状と、トランプ政権が志向する資本主義のあり方について読み解いていく。

トランプが向き合う世界の現状

トランプ大統領が進めようとしている政策の歴史的意義について考察する前に、米国がいまどのような現実に直面しているのかをまとめてみたい。

 

誰よりも早く米国が病んでいることに気が付き、対応策を打ち出したのがトランプであった。最も顕著なのは中間層の没落である。中西部の工業の衰退により、低学歴白人層の多くが失業にさらされ、家庭生活が崩壊した。

 

その結果、自殺、アルコール中毒死、薬物過剰摂取死などの絶望死が大幅に増加し、米国の平均寿命は先進国で群を抜く低水準まで落ち込んでしまった[図表1]。

 

出所:厚生労働省
[図表1]主要国の平均寿命の推移 出所:厚生労働省

 

希望の国(Land of Opportunity)アメリカで、歴史で初めて大規模な没落階層が発生したのである。

 

また、世界では資本主義体制そのものが問われている。先進国では空前の技術革命が進行する一方、分断と格差も顕著である。一握りのテクノビリオネアが台頭しているが、労働者はインフレによる実質所得目減りに直面し、生活は楽ではない。

 

新興国の一部では統治が破綻し、国民が流民化した結果、先進国の移民問題を引き起こしている。他方では、既存の世界秩序の改変を狙う専制国家群が存在感を強めている。

 

市場経済の「いいとこ取り」をした中国がフランケンシュタイン化し、国内のバブル崩壊と経済悪化を監視社会の強化で乗り切りつつ、世界覇権をうかがっている。

資本主義こそを正義とするトランプ政権

この新しい現実に政治はどう向き合うのか。

 

伝統的リベラリズムは行き詰まり、現実を直視した対応が不可欠になっている。米国でのトランプ大統領の再選と、欧州における「極右」政党の台頭などは、そうした流れのなかで理解されるべきである。

 

「資本主義が終焉に近づいている」との観測も投げかけられているが、性急な結論は避けるべきだろう。いま勢いを増しているトランプ大統領や、各国の「極右(急進右翼)」は、むしろ資本主義の擁護者、改革者として登場している面がある。

 

それではトランプとは何者なのか。民主主義という観点ではトランプをまったく理解できないだろう。いま地球人は、専制国家の北朝鮮もロシアも中国も含めて、すべてが民主主義者を自任している。

 

米国では民主党とトランプ支持の共和党との分断が激しいが、どちらも相手を非民主主義、ルール逸脱と非難している。

 

民主主義という物差しが主観的に扱われ過ぎて、判断の役に立たなくなったのである。

 

私は適切な物差し=評価基準は資本主義だと考える。トランプは事業経営者であり、お金儲けが正義であると固く信じていて、それを人々に伝播することが、世界と米国国民に役立つという強い信念を持っているのだ。

 

つまり、資本主義の守護神のような存在と見て良いのではないか。

 

トランプ政権の理念は、「資本主義が正義、資本主義なき民主主義は虚構」──。資本主義という観点から見れば、彼がやろうとしていることが整合的に解釈できる。

 

それが正しいと思うかどうかは、ポジションによって異なると思うが、資本主義を守り、発展させるという観点で考えると、彼がやっていることには多くの合理性があると申し上げたい。

 

 

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※本連載は、武者陵司氏の著書『トランプの資本主義革命』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

トランプの資本主義革命

トランプの資本主義革命

武者 陵司

日本実業出版社

「予測不能な人間でありたい」と自著で語るとおり、その剛腕で世界を振り回して混乱に陥れているトランプ政権。 トランプ政権がなにを目指しているのかを理解すれば、先が読める、投資で勝てる! 既存メディアの表層的な…

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