「働いているのに貧しい」――抜け出せない構造と向き合う
中村さんが特に違和感を覚えているのは、「正社員=安定」というイメージとのギャップです。
「学生の頃は、正社員になれば生活は安定すると思っていました。でも実際は“ギリギリ回せている”だけです」
給与が大きく伸びない一方で、社会保険料や税負担は着実に増えています。手取りが思うように増えない状況は、多くの若年層に共通する課題ともいえます。
国税庁『令和6年分 民間給与実態統計調査』によれば、30代前半の平均給与は449万円ですが、ここから税金や社会保険料が差し引かれると実際の手取りは大きく目減りします。
こうした状況のなか、中村さんは副業を考えたこともあるといいます。
「動画編集とか、スキルを活かせそうなものを調べたりもしました。でも、平日は仕事で疲れてしまって、なかなか踏み出せなくて…」
休日も、基本的には節約を意識した過ごし方になります。
「外食は月に1回あるかどうか。友人と会うのも控えがちになりました。誘われても、正直お金のことを考えてしまいます」
生活の質を下げてでも支出を抑える――そんな選択を続けるなかで、精神的な負担も無視できなくなってきました。
「“これが普通なんだ”って自分に言い聞かせることもありますけど、ふとしたときに虚しくなることがあります」
中村さんは、将来的には転職や収入アップも視野に入れているといいます。
「このままじゃダメだとは思っています。ただ、今の生活を維持しながら動くのは簡単じゃないですね」
「働いているのに生活が苦しい」という状態は、個人の努力だけでは解決が難しい側面もあります。賃金の伸び悩みと物価上昇のギャップ、都市部特有の高コスト構造――それらが重なり、静かに生活を圧迫しています。
「せめて、普通に働いていれば普通に暮らせる、っていう状態にはなってほしいです」
中村さんの言葉は特別なものではなく、多くの人が感じている実感なのかもしれません。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
