「困っている娘を放っておけない」…70代夫婦が続けた援助
正人さん(仮名・76歳)と妻の美代子さん(仮名・73歳)は、年金生活に入って8年になります。
夫婦の年金収入は合わせて月約24万円。退職金と貯蓄もあり、「慎ましく暮らせば何とかなる」と考えていました。
しかし、その生活は少しずつ変わっていきます。きっかけは、長女・由香さん(仮名・45歳)の離婚でした。
由香さんは結婚後、県外で暮らしていましたが、離婚を機に小学4年生の娘を連れて実家近くへ戻ってきたのです。
「最初は、一時的なつもりだったんです」
由香さんはパート勤務を始めましたが、収入は不安定でした。家賃や教育費の負担もあり、生活は厳しかったといいます。そのため、正人さん夫婦は少しずつ援助を始めました。
最初は食料品でした。
米や野菜を届け、孫の誕生日には現金を渡す。やがて、「今月ちょっと厳しくて…」という相談が増え、生活費の補填をするようになっていきました。
「娘と孫が困るくらいなら、自分たちが我慢すればいいと思っていました」
美代子さんも、当時は疑問を抱いていなかったといいます。
「親なんだから当然かなって」
しかし、援助は次第に“特別なこと”ではなく、“毎月当たり前に発生する支出”へ変わっていきました。
家賃の不足分、スマートフォン代、車検代、学用品代――。由香さんからの連絡は、いつの間にか“相談”より“お願い”の割合が増えていったのです。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得を消費支出が上回っており、多くの高齢世帯は貯蓄を取り崩しながら生活しています。
夫婦も同じでした。年金だけでは足りず、援助分は貯金を崩して対応していたのです。それでも正人さんは、「何とかなる」と思い込もうとしていました。
「娘のためだ」
その言葉を、自分自身に繰り返していたといいます。
