高収入でも安心とは限らない…“支える側”が突然崩れるリスク
「言葉が、出てこなかったんです」
都内の企業で管理職を務める健太さん(仮名・50歳)は、そう振り返ります。年収は約1,300万円。独身で、仕事中心の生活を長く続けてきました。
「忙しいのは当たり前でしたし、自分は体力的にも精神的にも強い方だと思っていました」
父を亡くした後、母・節子さん(仮名・75歳)は、都内の介護付き有料老人ホームに入居しています。入居一時金は父の遺産と自宅売却でまかない、月々の費用は年金に加え、不足分を健太さんが補填していました。
「自分は独身なので、母にできることはしておこうと。安心できる環境にいてほしかったんです」
仕事は順調でした。部下を抱え、責任も大きい立場でしたが、成果も出していました。休日は疲れを感じつつも、ジムや外食で気分転換を図り、なんとかバランスを保っていたといいます。
異変が起きたのは、社内の重要なプレゼンの最中でした。
「説明している途中で、急に次の言葉が出てこなくなったんです」
頭の中では理解しているのに、口が動かない。焦るほどに言葉が詰まり、会議室の空気が変わっていくのを感じたといいます。
異変に気づいた同僚がすぐに声をかけ、会議は中断。そのまま救急搬送されました。
検査の結果、脳梗塞などの重大な疾患は確認されなかったものの、「過度のストレスと疲労による一過性の言語障害」と診断されました。
「命に関わる状態じゃなかったのはよかった。でも、“次はどうなるか分からない”と言われたとき、初めて怖くなりました」
入院は短期間で済みましたが、その間にも現実的な問題が次々と浮かび上がってきました。
給与は休職により減額。母の施設費は変わらず発生します。さらに、自身の医療費や生活費も重なりました。
「これまで“なんとかなる”と思っていたものが、一気に崩れた感じでした」
