印字された「50万円」に絶叫
そうして、Aさんは予定どおり70歳まで役員を続けたあと退任。待ちに待った「4/15」、初めての年金支給日を迎えました。
しかし、いざ記帳してみると、Aさんの顔が曇ります。入金欄には、「50万円」と表示されていたのです。Aさんの試算では、年額436万円。月額に直すと36万円のため、2ヵ月分では72万円のはずです。
「おかしいだろ!」
思わず、ATMを前に大声で叫んでしまいました。居ても立ってもいられず年金事務所へ赴き事情を話すと、Aさんは2つの誤解をしていたことがわかりました。
複雑すぎる年金制度
年金事務所職員によれば、Aさんの誤解は、下記の2点です。
1.試算時は「65歳で退職する」はずだった
2.試算には「加給年金」が上乗せされていた
まず、Aさんは65歳以降も役員として高い報酬を受け続けていたため、在職老齢年金制度により老齢厚生年金(報酬比例部分)が全額停止となっていました。そのため、本来であれば増額の対象となるはずの報酬比例部分は、そもそも42%アップの計算に含まれていなかったのです。
また、試算時には「年下の妻」が考慮され、加給年金(約42万円)が上乗せされており、Aさんはその加給年金も含めて42%アップされると誤解していました。しかし実際には、加給年金は増額することはありません。加えて、繰下げ待機中は加給年金は支給されず、さかのぼって支給されることもありません。
さらに、妻はAさんが70歳の時点で65歳となり、自身の年金受給者となるため、加給年金はつきません。
「年金繰下げ受給」には見落としやすい“変動要因”がある
65歳当時の試算をそのまま当てはめてしまったことで誤解してしまったAさん。しかし、70歳まで働いたことで年金額自体は増えており、老齢基礎年金については在職老齢年金制度の対象外であるため、しっかり42%増額されています。
年金制度は複雑でわかりにくいのが正直なところです。試算時の前提条件から働き方やライフプランが変わり、年金額が大きく変わる人もいるため、節目節目で年金事務所に相談するなどして、自身の年金額を把握しておくようにしましょう。
〈参考〉
■日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html
■日本年金機構「老齢年金ガイド」
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表
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