選択肢2. 関係をリセットする「死後離縁」ルート
二つ目は、家庭裁判所の許可を得て、亡くなった祖父と孫との養子縁組を解消する「死後離縁」という手続きです。
これなら実親の親権が復活します。また、死後離縁で養子縁組を解消しても、栄太君に相続権は残りますし、相続税上の養子縁組の効果もそのまま利用できます。ただし、死後離縁は自分たちだけで勝手にできるわけではありません。家庭裁判所に申立てを行い、死後離縁が必要な理由を認めてもらって、許可を得る必要があります。
「じゃあ、許可をもらって親権が戻れば、私たちが息子の代わりに遺産分割協議書にサインできますよね?」
雅宏さんはほっとしましたが、ここにも「落とし穴」があります。
たとえ死後離縁をして親権が復活しても、父である雅宏さんは、今回の相続において栄太君と遺産を取り合う「利益相反(ライバル関係)」にあります。そのため、雅宏さんは栄太君の代理人になれないのです。親が自分の都合よく財産を分けることを防ぐためです。
「じゃあ、栄太君の母(雅宏さんの妻)なら相続人ではないから、復活した親権を使って単独で代わりにサインすればいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、法律のルール上、これも通用しません。両親がいる場合、親権は「共同」で行使するのが原則です。単独で親権を行使できる例外もありますが、今回のようなケースでは、父が利益相反で動けないからといって、母だけが単独で代理することは基本的に認められないのです。
そうなると、結局は、家庭裁判所に、父の代わりとなる「特別代理人(遺産分割の話し合いのときだけ、子供の代わりに参加する公平な第三者)」の選任を申し立て、母親と特別代理人が一緒に栄太君の代理人として遺産分割協議に参加しなければならないおそれがあります。
どちらを選んでも「相続人ではない人」が家に上がり込んでくる
雅宏さん一家の置かれた状況を整理すると、こうなります。
どちらの道を選んでも、当初聞いていた「紙1枚の手続き」の先には、裁判所への申し立て、複雑な書類作成、そして「自分たちだけで自由に遺産を分けられない」という拘束状態が待っていました。
