父の急死…残された家族を襲った「親権消滅」
養子縁組から数年後、昭雄さんが急逝しました。悲しみのなか、葬儀を終えた雅宏さんは、銀行口座の解約や不動産の名義変更などの手続きに入ろうとしました。
しかし、司法書士に相談した際、思わぬストップがかかります。
「雅宏さん、今回は未成年の孫・栄太君も法定相続人になります。ですが、栄太君の代わりに父親である雅宏さんが勝手にハンコを押すことはできません。栄太君には現在、法的な親権者がいない状態だからです」
「えっ? 実の親である私たちがここにいるのに?」
ここが養子縁組の落とし穴です。祖父と未成年の孫が養子縁組をした時点で、法律上、孫の親権は祖父に移ります。そして祖父が死亡しても、実の親の親権は自動的には復活しないのです。
法的に「親不在」となってしまった孫。未成年者である孫を含めた遺産分割協議を進めるために、長男・雅宏さん一家は、2つの選択肢の前に立たされることになりました。
選択肢1. 裁判所の管理下に入る「未成年後見」ルート
一つ目は、法律の原則どおり、家庭裁判所に申し立てて「未成年後見人」を選任してもらう方法です。未成年後見人とは、要は「親の代わりに親権と同等の権限を持つ人」のこと。本来なら親がやるはずの役割を、他人に任せなければならない異常事態です。
雅宏さんは「それなら、実の親である私たちが未成年後見人になればいい」と考えましたが、現実は甘くありません。自分の子供の財産であっても、親は自由にできません。
未成年後見人は「未成年者である孫・栄太君の法定相続分(権利)」を守るのが仕事ですから、「家は長男・雅宏さんが継ぐから、孫・栄太君は現金を少し」といった柔軟な分け方は、原則として認められなくなります。
必ずしも親が選ばれるとは限らない
未成年後見では「子供の利益」が最優先です。今回の相続において、雅宏さんと栄太君は昭雄さんの遺産を互いに分け合う「利益相反(ライバル関係)」にあります。このように親族間での対立が予想される場合や財産額が大きい場合などは、弁護士などの専門職が選ばれる可能性もあります。
「監督人」という監視役
仮に、今回の相続では相続人ではない(利害関係のない)栄太君の実母(雅宏さんの妻)が未成年後見人に選ばれたとしても、家庭裁判所は「未成年後見監督人(弁護士など)」を選任する可能性もあります。監督人とは、いわば後見人の「お目付け役」です。子供の財産をしっかり管理するように厳格に監視します。
