(※写真はイメージです/PIXTA)

どんなに立派な公正証書遺言があったとしても、親が生きている間に認知症で判断能力を失えば、その預金は凍結され、介護費用すら引き出せなくなる。この冷徹な現実を知らないまま、「完璧な準備をしたつもり」でいるご家族があまりに多いのです。本記事では、元エリート銀行員の父を持つ長男・洋介さん(仮名・58歳)が直面した、預金封鎖の悲劇をご紹介します。

「俺の死後、お前に苦労はかけんよ」自信満々だった父

「うちは大丈夫。父は元銀行員だし、公正証書遺言も作ってある。相続の心配はないよ」

 

洋介さん(仮名・58歳)の父、修造さん(仮名・82歳)は、地方銀行の支店長まで務めた人物でした。数字に強く、マネーリテラシーも高い自負があった修造さんは、3年前に妻(洋介さんの母)を亡くした際、すぐにすべての資産整理を行いました。

 

「洋介、俺の財産はすべて整理してある。この『公正証書遺言』を見ろ。俺に万一のことがあったら、自宅も預金もすべてお前に相続させる手続きになっている。俺のことでお前に苦労はかけんよ」

 

重厚な表紙の公正証書を見せられ、洋介さんは「さすが父さん、完璧だ」と感心しました。しかし、日々仕事に追われる洋介さんは、父の言葉を話半分に聞き流していました。「万一のこと」を「将来のこと全て」と漠然と捉え、「これで親の金銭管理で悩まなくて済む」と都合よく解釈してしまったのです。

 

「まさかそんな勘違いを」と思われるでしょうか。しかし、実際の相談現場では、立派な遺言書があるからこそ、生前の備えまで万全だと思い込んでしまうご家族が、驚くほど多いのが現実です。

 

そして、運命は皮肉でした。備えていた「死」よりも先に、想定外の「老い」が現実となってしまったのです。修造さんは亡くなる前に、認知症を発症してしまいました。

銀行窓口での“門前払い”

修造さんの認知症は急速に進行し、徘徊の症状も出始めました。そのため、洋介さんは急遽、修造さんを月額25万円の有料老人ホームに入居してもらうことを決意しました。入居一時金と当面の費用として、まとまったお金が必要です。

 

「父さんの口座には3,000万円ある。ここから払えばいい」

 

修造さんの通帳と印鑑、そして「印籠」である公正証書遺言をカバンに入れ、銀行の窓口へ向かいました。事情を話して、行員に払い戻しを依頼した洋介さん。しかし、予想外の言葉が返ってきたのです。

 

「大変申し上げにくいのですが……修造様の口座からお金を下ろすことはできません」

 

「え? なぜですか? 私は長男ですし、ここに公正証書遺言もあります。全財産を私に譲ると書いてあるでしょう」

 

洋介さんは声を荒らげそうになるのを抑え、遺言書を突き出しました。行員は困惑しつつもこう告げました。

 

「遺言書の効力が発生するのは、お父様が『亡くなられたあと』でございます。お父様はご存命ですので、この遺言書を使って預金を引き出すことはできません。」

 

「……はい?」

 

洋介さんは自分が勘違いをしていたことを認識して、背中に冷たい汗が伝いました。

 

「で、では、どうすれば……お金が必要なんです!」

 

「修造様ご本人の意思確認ができない以上、ご家族であっても引き出しはできません。『成年後見人』をつけていただき、後見人経由でお手続きいただくしかありません」

 

その瞬間、洋介さんは悟りました。修造さんが誇らしげに見せてきた「完璧な遺言書」は、「死ぬまでの一番お金がかかる期間」に対しては、ただの紙切れだったのです。

次ページ遺言は「死後に効力のあるもの」という落とし穴

※本記事は、筆者の経験に基づき、守秘義務の観点から事例を一部修正・変更して作成しています。また、本記事で紹介した対策は一例であり、個別の状況や資産内容等によって最適な判断・選択は異なります。金融機関ごとの具体的な手続き方法については各窓口へ、ご家庭に合った対策の選び方については専門家へ、それぞれご相談されることをおすすめします。

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