(※写真はイメージです/PIXTA)

孫の誕生や成長は、多くの祖父母にとって人生の喜びのひとつです。一方で、総務省『家計調査(2024年)』では、高齢夫婦のみ無職世帯の可処分所得は平均約22万円、支出は約25万円とされ、慢性的な赤字構造が続いています。孫との時間は幸福感をもたらす一方、家計的・心理的な負担を抱える高齢者も少なくありません。

「来るのが嫌なわけじゃないんです。ただ…」

ある日、陽菜ちゃんが言いました。

 

「おばあちゃん家に行けば、おやついっぱいあるから好き!」

 

悪気のない言葉でした。けれど和子さんは、その瞬間胸が痛んだといいます。

 

「私の家が“おやつをもらえる場所”になっているんだなって…。その期待に応えてあげないといけない」

 

家計簿を見返した夜、和子さんはため息をつきました。

 

「正直、つらいなと思う時があります」

 

孫が来ること自体が負担なのではありません。むしろ来なくなったら寂しいと分かっています。

 

一方で、老後資金の不安は常に頭にあります。平均寿命を考えると、あと15年以上生きる可能性もある。

 

祖父母から子・孫世代への経済的支援は珍しいことではありません。内容は教育費援助や生活補助、贈与などさまざまですが、日常的な支出も含まれます。

 

「孫は本当にかわいいんです」

 

和子さんは何度もそう繰り返します。

 

「来るのが嫌なわけじゃないんです。ただ、老後は長いですから…」

 

高齢者の家計と世代間支援の関係は、今後さらに重要になると見られています。少子化により祖父母1人あたりの孫数は減る一方、関係密度は高まる傾向があります。

 

交流が増えれば支出機会も増えます。

 

しかし、高齢者の多くは年金生活。支援能力には限界があります。

 

夕方、陽菜ちゃんが帰る時間。

 

「おばあちゃん、また来るね!」

 

「うん、いつでもおいで」

 

玄関で手を振りながら、和子さんは思います。

 

「来てくれるのは嬉しい」

 

でも同時に、

 

「少しだけ回数が減ったら楽かな」

 

そんな気持ちがよぎります。そして「そんなこと思うなんて…」と自分を責めます。

 

和子さんは今日も冷蔵庫にプリンを入れます。

 

「来たら喜ぶから」

 

その行為の中に、祖母としての愛情と、生活者としての小さな不安が同時に存在しています。

 

「孫はかわいい。でも老後は長い」

 

高齢期を生きる多くの人が抱える、静かな本音なのかもしれません。

 

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