「来るのが嫌なわけじゃないんです。ただ…」
ある日、陽菜ちゃんが言いました。
「おばあちゃん家に行けば、おやついっぱいあるから好き!」
悪気のない言葉でした。けれど和子さんは、その瞬間胸が痛んだといいます。
「私の家が“おやつをもらえる場所”になっているんだなって…。その期待に応えてあげないといけない」
家計簿を見返した夜、和子さんはため息をつきました。
「正直、つらいなと思う時があります」
孫が来ること自体が負担なのではありません。むしろ来なくなったら寂しいと分かっています。
一方で、老後資金の不安は常に頭にあります。平均寿命を考えると、あと15年以上生きる可能性もある。
祖父母から子・孫世代への経済的支援は珍しいことではありません。内容は教育費援助や生活補助、贈与などさまざまですが、日常的な支出も含まれます。
「孫は本当にかわいいんです」
和子さんは何度もそう繰り返します。
「来るのが嫌なわけじゃないんです。ただ、老後は長いですから…」
高齢者の家計と世代間支援の関係は、今後さらに重要になると見られています。少子化により祖父母1人あたりの孫数は減る一方、関係密度は高まる傾向があります。
交流が増えれば支出機会も増えます。
しかし、高齢者の多くは年金生活。支援能力には限界があります。
夕方、陽菜ちゃんが帰る時間。
「おばあちゃん、また来るね!」
「うん、いつでもおいで」
玄関で手を振りながら、和子さんは思います。
「来てくれるのは嬉しい」
でも同時に、
「少しだけ回数が減ったら楽かな」
そんな気持ちがよぎります。そして「そんなこと思うなんて…」と自分を責めます。
和子さんは今日も冷蔵庫にプリンを入れます。
「来たら喜ぶから」
その行為の中に、祖母としての愛情と、生活者としての小さな不安が同時に存在しています。
「孫はかわいい。でも老後は長い」
高齢期を生きる多くの人が抱える、静かな本音なのかもしれません。
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