「ただの通知だと思っていた」…実家に届いていた赤い封筒
会社員の裕次さん(仮名・54歳)は、地方で一人暮らしをする父・義男さん(仮名・82歳)の家を月に一度ほど訪ねていました。
義男さんの年金は月16万円ほど。母はすでに亡くなり、築40年を超える持ち家で暮らしています。家賃はかかりませんが、固定資産税、介護保険料、医療費、家の修繕費など、支払いは少なくありません。
裕次さんは、父の暮らしを「何とか回っている」と思っていました。
「年金もあるし、家もある。困っていたら言ってくるだろうと思っていました」
しかし、実際には義男さんの生活管理は少しずつ崩れていました。
郵便物は食卓の端に積まれ、封を開けていない書類も混ざっていました。裕次さんは何度か目にしていましたが、仕事の忙しさもあり、深く確認していませんでした。
その中に、赤い封筒がありました。
「重要」「至急」「納付期限」といった文字が見えましたが、裕次さんは父に聞かれても「あとで見るから置いておいて」と言ったまま、次の訪問まで忘れてしまったといいます。
数週間後、義男さんから電話がありました。
「役所から、差し押さえって書いた紙が来てる」
裕次さんは、血の気が引きました。
実家に駆けつけると、固定資産税や介護保険料の未納に関する督促状、催告書、差押え予告に関する書類が見つかりました。
「なんで早く言わなかったんだ」
そう言いかけて、裕次さんは口をつぐみました。書類は、以前からそこにあったのです。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が月11万8,465円である一方、消費支出は月14万8,445円となっており、平均では毎月赤字です。年金月16万円でも、税金や医療費、住宅維持費が重なれば、余裕があるとは限りません。
義男さんは、払う意思がなかったわけではありませんでした。ただ、どの書類が重要なのか、いつまでに払うべきなのかを整理できなくなっていたのです。
