「学長」はどう選ばれるのか
ちなみに、学長はどのように選ばれるのか。学長選考については、学長選考会議の案件であり、学長は関与していない。私は1期4年の3期目だが、奈良医大では、私が学長に就任する以前、並びに私の1期目については、教職員による選挙で学長が決定され、学長選考会議はその結果を追認している状態だった。
これも教授選考と同様に不思議な制度である。社長を社員の投票で選んでいる企業はなかなかないだろう。なぜなら社員が選んだ社長ではガバナンスが利かないからである。一般社会にないものがなぜ大学だと当たり前のように選挙が行われていたのか。恐らく慣習であろうが常々疑問に感じていた。
これに対し、2014年に文部科学省は学校教育法を改正し、学長を選挙(人気投票)で選ばないように各大学を指導した。同年を機に学長の選出は、学長選考会議が責任をもって手掛けることとなった。選考会議は種々な要素を勘案して、約2カ月をかけて選考する。
学長選考会議の委員は学外の有識者を含めた委員で構成される。具体的には、大学の教育研究審議会から4人、経営審議会から4人で構成され、半数以上が学外委員であることが規定された。これにより、私自身、2期目の2016年、3期目の2020年は、いずれも学長選考委員会による選考を経て再任されている。選考のプロセスには、業績評価だけでなく、面談や所信表明の講演なども含まれている。
学長選考に際しては、現在もいくつかの大学では「意向投票」と称する選挙に似た投票方式が残っている。あくまで最終決定は選考委員会によるものだが、意向投票の結果を参考資料の一つとしている。こうなると、意向投票と学長選考会議が選んだ人との間に相違がある大学も少なからずあったようだ。
教育機関トップとしての役割
教授選考制度の改革は、ただの手続きの見直しではない。大学の未来を左右する人事を無記名投票ではなく、エビデンスに基づいて評価することで、実力と人格で評価される人事を確立していく。
私はこの改革によって奈良医大が健全な方向に進んだと信じている。だが、改革は一度で終わりではない。不断に見直し、改善し続けることで、国際的にも通用する大学としての地位を固めていかなければならない。それが、未来の医療を担う人材を育てる大学の責任である。
細井 裕司
奈良県立医科大学
理事長・学長
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