改革後の教授選挙はどう変わったか
こうした不合理を前に、私は教授選考方法の改革が必要だと確信した。追い風となったのは、2014年の学校教育法改正だ。文部科学省は法改正だけでなく全国の大学にガバナンス改革を求め、国公私立約780校に対して、法の趣旨の徹底を指導していた。
学校教育法改正の第一の趣旨は、「大学(短期大学を含む。以下同じ。)が、人材育成・イノベーションの拠点として、教育研究機能を最大限に発揮していくためには、学長のリーダーシップの下で、戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築することが重要」とされ、主に学長の選考方法や副学長の職務内容、教授会の役割の明確化が目的だった。
つまり、教授選挙の改革を示唆したものではなかったが、ガバナンス改革という考え方の中で教授選考の在り方にも合理性が求められると判断し、2015年度において、独自に教授制度の改革に踏み切った。さらに以降も継続的な改善を加え、現在は次の方法で教授を選考している。
1.教授会を決定機関から審議・意見聴取機関に改める
教授会での無記名投票による選挙結果をもって選考決定としていた制度を改め、選考委員会が選考した結果に基づいて、教育研究審議会が審議し、その結果を基に学長が最終的な適否を判断する制度とした。この制度を開始してから選考委員会の結果が覆ったことはなかった。
2.選考委員会は候補者の順位付けをして推薦。その評価を実質的な判断材料とする
選考委員の調査を基に、選考委員会は候補者を3人以内に絞り込む。選ばれた候補者は、選考委員の前で業績などについて自身でプレゼンテーションをする。その後、選考委員が順位を付けた上で、教授全員による「意見聴取会議」(従来の教授会)で詳細に報告し、意見を聞く。
3.意見聴取会議では、候補者について、各教授は異議の有無の意思表示をする
意見聴取会議は2回行う。1回目の意見聴取会議では、選考委員長が選考委員会での審議経過を説明。その上で、提示した候補者について、教授からの意見を聞く。異議のある教授はその場で反対意見を述べるが、このとき、必ず理由を含めて説明をする。この反対意見を踏まえ、選考委員会で再検討する。
2回目の意見聴取会議では、候補者のプレゼンテーションを行う。意見聴取のあと、選考委員会を開き、候補者を2人以内に絞る。2人の場合は順位を付けて意見聴取会議に諮る。
原則として、意見聴取会議では無記名投票や匿名での意見陳述は一切できない。自分の意見として、また理由を述べて意見陳述することによって、議論の透明性が担保されるようになった。
4.選考委員会は候補者を2人以内に絞り、学長面談を経て1人を選考する
意見聴取会議の意見を踏まえ、選考委員会は教育研究審議会に2人以内に絞った候補者の順位を付けて推薦する。教育研究審議会は推薦された候補者について審議し、異議がなければ順位を付けた2人を学長に推薦する。選ばれた教授候補者は学長と面談を行い、学長が最適な教授候補者1人を決定する。
これが教授選考の規定であるが、改革後、教授選考委員会による入念な調査と評価が事実上の決定要素となり、すべて1位の該当者が最終的に教授に選出されている。
こうして、選考委員会での評価が選挙運動によって覆ることはなくなった。ではどうして意見聴取会議が必要なのだろうか。それは、教授にも選考に加わってほしいという思いともう一つ重要な役割がある。選考委員会のメンバーだけでは各候補者のマイナス情報が得られない場合があるからだ。多数の教授が選考に加わることにより、マイナス情報を入手しやすくなる。例えば、研究や診療で不正に関与した過去のある候補者などは、不適格として除外しなければならない。
そこで、意見聴取会議の冒頭では、議長が文書を読み上げ、守秘義務を明示するとともに、候補者のマイナス情報があれば選考委員長に伝えるよう依頼している。意見聴取会議は、不適格者を除外するための仕組みでもある。
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